Fall. (ページ9)

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9　I defend you. ページ9

俺は気絶していたらしい。
いつのまにか夜になっている。
ルナードが俺の顔を覗き込んでいた。

「ルナード、たくさん勉強してきたか？」
俺はわざと元気な声で聞いた。
まだ、顔がヒリヒリする。
ルナードは頷き、無言でノートを差し出した。
誰かに貰ったのだろう。
汚いアルファベットが敷き詰められていた。
"くたばれ、狼"
なんてもの書かせてるんだ、あの司祭は。
「凄いな。」
とはいえ、ルナードは悪くない。
俺はルナードの頭を撫でた。
ルナードは、嬉しそうにはにかんだ。

ルナードの手を引いて、館に戻ることにした。
それにしても、帰ってきてくれて良かった。
ソファで休むルナードを
見ていて、ふと気づく。
ルナードは脆い。
毛布もなしに寝かせたら、
風邪を引いてしまう。
明日、買い出しに行こう。

「ルナード、起きろ。」
まだ太陽はある。だが、人間は昼動くもの。
怪しまれては面倒だ。

怖がるルナードの手を引いて、
街へと足を踏み入れる。
直射日光はさすがにこたえるので、
日陰を歩く。
服、毛布、食料。
その他、ルナードに必要なものを買っていく。
最後にルナードに飴を渡し、
館への帰路を行った。

「見つけたぞ。」
笑いながら、呼び掛けられる。
昨日の司祭の声だ。
全身が警報を鳴らす。

｢おお！｣
二人の人間が、ルナードに抱きつく。
恐らく、両親だろう。
「ーー、怖かったな、
あれは穢れた魔物なんだ、
さあ、家に帰ろう。」

ルナードは、全力でもがいている。
人間はそれを知ってか知らずか、
ルナードの手を引いている。

「待て。」
あの司祭がいるとか。
ルナードに魔物は穢れていると知られたとか。
どうでもいい。
俺は魔物なんだ、欲深くていいだろう？

「穢らわしい。」
司祭はそう言って、瓶を手に取った。

「魔物を脅せると思っているのか、人間？」
「ああ」
司祭は答えた。

ルナードはこちらを見ている。
人間の手を振りほどこうと必死だ。

もう、いいだろ。
お前たちが捨てたんだ。
とっとと俺によこせ。

「離せ。その子は俺が育てる。」
「黙れ！私たちの子だ！」

薄々分かっていたが、仕方がない。
もういい。
俺はつかつかと三人に近づくと、聖水の入った瓶を叩き落とした。

「ルナード、俺とこいつら、
どっちを選ぶんだ？」
今日は陽射しが強すぎる。
皮膚が痛い。
焼けそうだ。

ルナードは答えられない。
口では。
ルナードは、人間の手を取った。
頭がガンガンする。

「それ見たことか。」
どこからか、声が聞こえた。