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35 You decided to do so but, I can't agree. ページ35

「若様。お食事でございます。」
私の左手の上で冷えきったキッシュ。
このセリフを言ったのは、何回目だろうか。
「いや、あとで頂こう……。」
このセリフを聞いたのも。一体。
私は、思わず溜め息をついた。
若様が弱っていらっしゃるのは、
若様の性格からして、仕方のないことだろう。
だが、私は、あなたのこんな姿を見るために、
不様なあなたの側にいるわけではない。

「若様。せめてお食事だけでもお摂り下さい。
体に悪いですよ。」
キッシュをダイニングテーブルの上に置いて、
私は若様の隣の椅子に腰掛けた。
若様は、
それでも俯いた顔を上げようとしない。
「ルッペル。俺は、もう……。
生きる意味が分からないんだ。」
ああ、このセリフ。
これも、あなた以外の人から、何度も聞いた。
生きる意味なんて、
私が1番聞きたい稚拙な話だ。

「俺は初め、親父の鼻を明かしてやるために
生きていた。
そして、ルナードに出逢えて、
それからは。
ルナードを守るために。幸せにするために、
生きてきた。
それが、急にいなくなって。
もう、何をしたらいいのか、分からない。」
若様は、上を仰ぎながら、語った。

ルナード様は、谷の奥地に、
静かに眠っている。
いや、眠っている、という表現は、
しっくりこない。
ルナード様は、私たちを、見守っている……。
そんな、気がする。

「若様。
では、もう誰かのために生きることは、
やめてしまえば良いのです。
若様は、若様のために、生きればよいのです。」
私がそう言うと、
若様は、綺麗事だな、と、笑った。
でも、悪くないな。とも。

「ルッペル。俺は、最後まで、
いい主人じゃなかったかもしれないな。」
最後?魔物の最後は、いつも。

自害、と。相場が決まっている。

「ご冗談を。若様より素晴らしい
主君など、あの世にも存在いたしません。」
世話かけるな、と、若様は言った。

私は、若様につられて笑った。
寂しそうだった若様の顔は、
まさにいたずら好きの少年だ。
そう。
たとえ、また私が後悔に苛まれても。
あなたの笑顔がそこにあれば。
私は、怖くないのです。

さあ。
数年分の、エンディングノートを
したためましょう。

36 I am not going to say a naive.→←34 Aishiteru.


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設定タグ:シリアス , ペケーニョ・デレーチョシリーズ , アップルパイ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時

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