31 Stay with me. ページ31
やっぱり、この島には、
ワスレナグサはないらしい。
その代わりに、私はシオンの花を摘んできた。
季節外れのシオンが咲いた。
空は重たく沈んだ黒雲が垂れ込め、
今にも降ってきそうだ。
広場に戻ってくると、
そこには、おおかみさんしかいなかった。
「おかえり、ルナード。
お前までいなくなったら、
どうしようかと……。」
子供たちは?
なんて、聞けなかった。
答えは、分からないまま。
それでいい。これからも、ずっと。
「でもさ、私はいつか、いなくなっちゃうよ。」
私は、シオンを握る力を強くして、
おおかみさんの隣に座った。
「そうだな。お前は、人間だから。
俺たちより早くいなくなるのは、
仕方ない。」
おおかみさんは、知ったように言うけれど、
嘘を吐く時に頬杖をつくのは、
とうの昔から知っている。
「Stay with me.」
おおかみさんは、不意に呟いた。
「そう言う相手が多すぎて、
もう息が詰まりそうだ。」
「ロマンチストだね。」
苦笑しながら言うと、
おおかみさんも、小さく笑った。
私は、シオンの花を、広場の片隅に移植した。
いつか、みんなで見よう。
誰かがいなくなる前に。
そうして、またくだらない話をしよう。
それでいい。それがいいんだ。
「ルナード。」
「何?」
「Stay with me.」
言っておけるうちに言っておこうと思って。
そう言って、おおかみさんは、
私の白髪が増えてきた頭を撫でた。
子供のころから、おおかみさんは
ずっと変わらない。
頭を撫でる強さも。
やわらかい手も。
だけど、私は変わってしまった。
顔には小じわが目立つ様になり、
走ることも少し辛くなってきた。
自分だけが変わっていくのは、
少し不思議な感覚だ。
「おおかみさん。また、みんなで見ようね。」
「ああ。」
きっといつか。
その日はやってくるはずだ。
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時