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30 How come? ページ30

「ヴァリテ様、落ち着いて下さい。」
ヴァリテ様は小舟の上で、ずっと暴れている。

「これが落ち着いていられるか!
ふざけるなよ……。
僕だって戦える!
あんなやつに、僕が負けるもんか!」

そう言って、さきほどから、
私は何発も殴られている。
大して痛くはない。
ただ、私を追い越した背丈だからか、
顔を中心に殴られる。
足の不自由な私への配慮なのか。

「ヴァリテ様。これから、どのように
生きていくおつもりですか。」

小さく島が見えてきた。
芸術と差別の国、アリア。
私がここを選んだのには、
理由がある。
それは、不思議な男に言われたからだ。
その男は、紫苑の髪をもち、
ヨウと名乗った。
カロン訛りの言葉で、
3人の子供たちを、
それぞれ、
アリア、カロン、ベルギウスに
送ってほしいと言う。

私は、彼から、どこかで嗅いだことの
ある匂いを感じ、
その言葉に従うことにした。

芸術と差別の国、アリア。
太陽と不平の国、カロン。
明日と暴力の国、ベルギウス。

彼らはそこで、何を見るのだろうか。

「僕は、全ての怒りを引き受ける。」

ヴァリテ様は、強い瞳で語った。

「殺し屋になってやる。
いつか、あいつの依頼がくるはずだ。
その時、僕は、地獄を見せてやるんだ!」

「結構なことです。」

小舟は、騒々しい軋んだ音を出して、
港に着いた。

「ねぇ、ルッペル。
私、何も分からないよ。」

「それさえ分かっていれば十分です。
私も、若様の命があれば、
私もすぐに助力いたします故。」
当然の感情だろう。
彼女が最も、何も知らないのだから。
何故、こうなったか。
私は、何者か。
それを話すのは、もう少し先でも
構わないだろう。

私は、彼女の心の傷を増やすために
ここにいるのではない。
若様は、それを望んではいないのだろう。

小舟は、いつの間にか港に着いた。

最後は、マリ様を選んだ。
最後まで、若様の傍から離れなかった。

「ねぇ、ルッペルさん、
私、もう何も言いたくないの。」

「何故です?」
私は、答えを促した。

「こんな数時間の間でさえ、
私にとっては、かけがえのない
思い出になってしまうから。」

「マリ様……。」

私は、そんなマリ様の目を見ることすら、
彼女にとっては、
攻撃にしかならないのではないか。
そんな気がしてならなかった。

かくして、小舟は、静かに港に着いた。

31 Stay with me.→←29 e.g.


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設定タグ:シリアス , ペケーニョ・デレーチョシリーズ , アップルパイ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時

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