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…俺は何がしたくてまだ生きてるんだろう。

一通りあの行為に至るまでを思い出した後、

全てが無駄だったと分かりどうしようもない絶望感に蝕まれる。






自ら命を経とうとしたアイドルなんて終わりだ。

ましてや、メンバーに知られるなんて…。









流石にもう一度手首を切る勇気はない。

…だって、めちゃくちゃ痛かった。





あんだけ痛い想いをしたのに死ねないだなんて…死はどれ程の物なのか。

死への恐怖を知ってしまったから…暫くはきっと、自分は死ねない気がする。









「…はぁ、…」



ベッドの上から降り、手首に繋がれたよく分からない物も忠実に外さず窓の方へ向かう。





病室の窓から見える綺麗な月と少しの星、それと夜景。

こんなの見たのいつぶりだろ…


いつも下ばっか見てたり、目まぐるしく忙しい日々を過ごしてたりしてたから

空なんて…




意識して見るとキラキラと輝くその景色に無意識に手を伸ばしてた…









「っ北山!???」


「…っ…」




あの時の意識を飛ばす直前の甘い匂い。

その甘い匂いの人物に凄い勢いで腕の中に引っ張られた。

その反動でガシャンッと大きな音を立てて腕に繋がってたコードが外れた。








「っ、何やってんだよ!また死ぬ気かよ!」


「…は?死なねえよ。ただ俺は…」



景色を見てただけ、そう紡ごうとした言葉は声にならなかった。


だって…









「……っ死なないで、…おねが…っ、生きて…」


言葉にならないくらい此奴が泣いたから。








子供のように縋り泣きついてくる姿に胸が痛くなった。

何か分かんないけど今までどう頑張っても思えなかったのに、

此奴の為にも生きなきゃって思った。








そっと指先で肌に触れれば…

何故か時間が少し止まった、気がした。








「…うん、…生きるよ、ちゃんと。」


嗚咽を洩らしながら泣き続ける此奴には何処まで言葉が届いてるか分からないけど、

でも嬉しそうに泣きながら笑ってくれたから。







…俺も、少しだけ、泣いた。

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作者名:美結 | 作成日時:2019年5月23日 23時

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