け _ VI ページ6
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それから数日後、今まで通り任務がくるようになった。
Aは異能生命体だ、という事を幹部等の上層部にしか教えなかった。
無理に心配等をされたくない、との事だ。
何とも君らしい、と首領の森は二つ返事で了承してくれた。
だが、Aにはそんな事二の次だった。
あの日以来、逢ってすらいない太宰との方が頭を埋め尽くしていた。
A自身が撒いた種なのだが、如何回収すれ良いのか解らない。
普通に謝って何とかなったら数日経った今、こんな気持ちになる訳がなかった。
「ねぇ、中也。如何すれば善いと思う?」
今回はマフィア傘下が情報を横流しにしているとの事で壊滅させなければいならない、そういう依頼だ。
「俺に訊くな」
因みにもう任務は終了して帰り道である。
中原は太宰に任せようと思っていたが、その太宰とAが不仲になった為、
中原は色々ともう諦めていた。
「何よ、相棒でしょ?それぐらい判っててよ…」
Aはギロっと中原を睨む。
「あぁ?あんな青鯖と一緒にすんな。それに彼奴の考えてる事なんざ昔から判んねぇよ」
中原は鼻で笑う。
相棒が判らないなら自分も判らないのでは、とAは思った。
「中也…、治、何か云ってた?」
少し声が小さい。
「…何も。只、何時も以上に死のうとしてた」
中原の言葉でAはハッとする。
相棒でも何でもないAだからこそ判るのだ。
「治に、謝らないと…!!」
「っおい!!」
Aは中原の呼び止めに答えず、全力疾走でマフィアを目指した。
太宰が死ぬ事は到底あり得ない。
だが、命は何時か尽きる物。尽きたAだからこそ判る。
太宰はきっと死ぬ、否、死のうと何度も繰り返す。
Aに触れる事ができないなら死んだ方がマシだ、と考える男だからだ。
「お願い、間に合って…!!」
凄い速さでAの周りの風景が変わっていく。
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結愛 - ……おさむんの夢主を思う気持ち伝わって泣けた。うん (2023年2月28日 22時) (レス) @page3 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - なんか泣けました。サイコー( ;∀;) (2020年4月18日 0時) (レス) id: b9064fdf81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年4月13日 10時