ただのお手伝いですので【時透無一郎】

耳が良いので ページ22

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蝶屋敷の皆が寝静まった夜。


今日から我妻くんも機能回復訓練に参加すると聞いていたから、何か励ましの言葉でも言ってあげたかったんだけど…なにかと今日は忙しくて、日中は全く話を出来なかった。


もう夜も大分遅いし、寝てしまっているかな……


「…………」


そうっと扉を開いた。

……皆、眠っている。そうか、疲れているだろうしね。
まあ、当然といえば当然か。



眠っている三人に近づいた。
随分ぐっすりだなぁ…こんなに疲れているくらいだから、きっと毎日お腹も空いてるよね。
明日から、もうちょっと量を増やそうかな……

起きていたら頼もしい三人だけど、眠っていたら年相応というか、弟みたいに見える。

弟といえば、時透くんはしっかりやれているかな。
あんなに行くのを止めていたのに、いざ来てみたら手紙や烏の一つも寄越さないし…あれ、もう忘れられちゃった？
いや、それはないか。さすがに。


少し大きな溜息が出たとき、嘴平くんがもぞもぞと寝返りを打った。

びっくりした…起こしちゃったかと思った。


嘴平くんも頑張っているよな、ちょっと常識が足りないところはあるけれど。
守られているのに、なんだか守りたくなるというか、なんというか。

ふと、頭に手を伸ばして、ふわっと撫でてみた。


そうすると、私の手に頭をすり寄せるようにするものだから……


「……ふふ、」


思わず笑みが溢れた。なにこのかわいい生き物。




竈門くんの方に向き直って、乱れた布団をそっと直して。


一番深い眠りについているのであろう我妻くんに近づいた。


いつも騒がしい子ではあるけど、竈門くんの話を聞く限りではちゃんと自分の考えを持ってて、頼れるんだとか。


「……偉いね、君は…鬼を殺せない私の分まで、戦ってね」




言ってから、ハッと口を塞いだ。いけない、これで起こしてしまったらどうするんだ。




……また明日、朝から『頑張って』と伝えられればいいか。




そして私は、そっと部屋から出て行った。









朝を迎えて。



ーー「……へ、何、何だったんだ、さっきの……！！」





耳が、良いので。





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