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それは、三月ももう暮れだと云うのに、まだ少し冷える或る朝のこと
マンションの廊下から玄関越しに響いてきた大きなくしゃみ、覗いてみれば寒そうにする人影
あまりに寒そうなものだから
" 温かいお茶でもいかがですか？ " って
声を掛けると目を輝かせた＿＿茶髪に鼻の頭の絆創膏が印象的な＿＿青年の彼は、どうやら中原さんの部下だったらしい
「おはようございます、中原さん」
絆創膏の彼に遅れて挨拶、すれば気の所為か、いつも通りの短い返事がいつもより不機嫌で
まだ少し眠たそうな蒼眼は、いつものように私と目を合わせはしなかった
「……中原さん」
「あ？」
「もしかして、朝弱いですか？」
くすり、と口の端っこから零れる笑い声
だってまるで寝起きの子供だ、特に訳もなく朝に機嫌が良くないなんて
恰好良いとばかり思っていたお隣さん、けれどちょっぴり可愛らしい一面を知ってしまった
「……は、待て、違、」
気怠げな表情を顰め何か云い掛ける彼へ
「これどうぞ、中原さんの分」
「……俺の分？」
「はい、勿論です」
そっと差し出したのは、さっきと同じ湯気の立つ温かいお茶
絆創膏の彼から『中原さんを待っている』と聞いたものだから、時間を見計らって淹れて取っておいたものだった
よって別についでという訳ではないけれど、でもだからってほら
「＿＿＿悪ぃな、さんきゅ」
どうしてそんなにまで綻んだ顔をするのやら
素敵な帽子の下に覗く素敵過ぎる笑顔、細められた彼の瞳が青空なら、揺れる彼の髪は夕焼けだろうか
朝の空はまだ色が薄いというのに
「＿＿＿あ、茶柱」
しばらく中原さんから離れなかった目が、次に見つけたのは幸運の兆し
間の抜けた声でそれを呟いた私、反応して確かめるように湯呑みを見る彼
「きっと今日は良いことがありますね」
云って微笑めば、驚いたような中原さん
茶柱なんて滅多に見ないからか、大きく目を見開いて眠気も吹っ飛んだ模様
けれどそれは、直ぐに耽美な笑みへと移ろった
「良いことならもうあった」
そして唐突に中原さんは口を開いて
宣言された意味を理解出来たのは言葉の表面上だけで首を傾げる
良いことって、と、素振りで聞き返してみると
「手前の顔を見られたし、手前が淹れた茶も飲めた」
何故判らないのか、といった風に告げられた返事は思いもよらず甘く優しかった
「朝からとんだ良い一日じゃねえか」
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楓(プロフ) - 完結おめでとうございます！鼻血が出過ぎてぶっ倒れる所でした(笑) 推し尊い…… (2019年4月3日 0時) (
レス) id: 381002261f (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 完結おめでとうございます！キュンキュンが止まりませんでした。ありがとうございます！ (2019年4月2日 16時) (レス) id: 4d7fcc5e30 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いいお話でした。 (2019年4月2日 15時) (レス) id: 1bfa3e637e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 更新されてる？( ☆∀☆) (2019年2月9日 10時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - あぁ､､､推し(中也)が尊い､､､ (2019年2月9日 9時) (レス) id: c6be9b3184 (このIDを非表示/違反報告)
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