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急いでるのに、急がなきゃいけないのに

中原さんの片手が私の左手を握って、もう片方の手が私の顎をそっと掬うから

されるがまま上を向かされた私は、簡単にその場に立ち尽くして動けなくなる




「___なんだ、可愛いじゃねえか」




こんなの、お世辞にしたって心臓に悪過ぎた

忙しない朝の一コマ、目の前で綻ぶ青い瞳

若くして幹部を務める、帽子がお似合いで、珈琲はブラック派のマフィンが好きなお隣さん

お隣さんくらいが、ちょうど良いと、思ってた




「……中原さんには、一番、見られたくなかったです」


「何云ってんだよ、俺が一番、どんな手前も綺麗だって思える自信があるぜ?」



今日は朝から糖度が高い、目覚めたての脳はまだちゃんと働いてくれていないのに

中原さんのような、素敵な人を眺めるのには、お隣さんというのは少し近過ぎたかもしれない



「仕事場、どこだ、送ってやる」

懐から車の鍵を手に取って見せる彼


「……じゃあ、駅まで」

「ん、了解」


そんなやり取りから間もなく

見るからに高そうな車に、エスコートさながらに乗り込まされた後、何でもなさそうに彼は云う



「着くまでにその顔どうにかしとけよ」



あんまり人に見られたくねえんだろって、自分は無理やり見たくせに、そんなに優しい目をするのはずるじゃないか


運転席の後ろからでも見える、座席越しの橙髪

ハンドルに預けられた手はやっぱり大きくて、袖からちらつく腕は逞しくて

___恰好良いにも程があると、思うんです





中原さんの運転にお世話になってる間、お言葉に甘えて私は化粧やら何やら、身だしなみを整えるのに勤しみ

そうこうしてるうちに、すぐに車は駅へと着いた


何度もお礼を云ってから、車を降りて彼と別れれば何だか魔法が解けたような気分が少し

なんて云ってないで仕事場に急がなきゃ

今日の手始めの仕事はきっと、盛大な遅刻を怒られることだろう







やっと出勤すれば、私が云うよりも先に、先輩上司様から投げ掛けて下さった挨拶

おはようございます、と、それから


「二時間半の遅刻ですよ」


付け加えられたお叱りの言葉



「すみません、寝坊してしまいました」

「…まあ、新人の君にはまだ、ここ(・・)の仕事は忙し過ぎるでしょうから、疲れ果てるのも無理はありません」


それでも次はないぞと、寛大なお心配りと共に眼鏡を光らせ釘を刺す彼に、頭を下げて返事をした




「__はい、安吾先輩」




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(プロフ) - 完結おめでとうございます!鼻血が出過ぎてぶっ倒れる所でした(笑) 推し尊い…… (2019年4月3日 0時) (レス) id: 381002261f (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 完結おめでとうございます!キュンキュンが止まりませんでした。ありがとうございます! (2019年4月2日 16時) (レス) id: 4d7fcc5e30 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いいお話でした。 (2019年4月2日 15時) (レス) id: 1bfa3e637e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 更新されてる?( ☆∀☆) (2019年2月9日 10時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - あぁ、、、推し(中也)が尊い、、、 (2019年2月9日 9時) (レス) id: c6be9b3184 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年3月21日 23時

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