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「Aちゃん、今、手空いてるかな」



控えめに尋ねてきたのは谷崎さんだった

それに伴って気付けば、空には太陽に代わって月が昇っていて、太宰さんが引っ越す前日である今日ももう終わりに近いらしい



「はい、大丈夫です」

「良かった、ちょっと来てもらえる?」



手招きされたそこは給湯室で

真ん中に置かれた机に、突っ伏すように眠りに着く人の姿があって

くしゃっとなった黒い蓬髪、広い背中を覆う砂色の外套、素肌を隠す真っ白な包帯

それが誰か判らない筈がなかった

だって私は、引っ越しの挨拶の時から、彼を間違えたことはないのだから



「ボクも一応起こしたンだけど」

「……お疲れ、なんですか?」

「そりゃあもう太宰さん、毎日Aちゃんを目で追ってたンだよ……気付かなかった?」



気付かないようにしてました、そう絞り出した私に谷崎さんは「そっか」と一言返して微笑んで


それから____


Aちゃん、太宰さんを起こすの得意だよね?


____なんて、私が理解するのも待たずに




「じゃあ後は任せるね、ごめんねAちゃん、でも太宰さん、喜ぶと思うから」

「そ、そんな、谷崎さん!」



帰る支度を早急にこなして、私の呼び止める声も虚しく、谷崎さんは社を後にしてしまった



どうしよう、どうしよう

置いて帰る訳にもいかないし、ああ、これも太宰さんの思惑だったりして?

色んな思考がこんがらがって、そんな中、ふと目をやった太宰さんが

あまりに安らかで、どこかあどけない寝顔をしているものだから




「……お疲れ様です」




そっと、太宰さんの頭に手を置いてしまった

触れた髪は細くて、私の指先を通り抜けてゆく

起こさないように一度だけ、優しく、優しく撫でた




「……太宰さん、避けたりしてごめんなさい、嫌われちゃったかもしれませんね」




ほろりとそれは、零れ出た

太宰さんの口からそばに居なくなることを告げられるのが怖くて、そうしてるうちに、余計にどんな顔を向けたら良いのか判らなくなって

と、太宰さんが寝てるのを良いことに、天邪鬼な本音を声に出して並び立てた

そして、それから




「太宰さんが好きです」




たったこれだけ云うために、一体どれくらいの息を吸ったのだろう



「そう云えば、居なくなりませんか? ずっと私の隣に居てくれますか?」



本当は貴方の隣を独り占めしていたい



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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月16日 17時

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