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そもそも____
私がこうして、太宰さんと面会してるのには、ちゃんとした理由があった
その理由と云うのも、例によって中也との任務の件
太宰さんが幹部時代、標的の組織についての情報を収集していたものが残ってると聞いて
「ああそうだ、一応聞いておくけど」
それを資料にまとめたものを、何と私へ寄付してくれると聞いて
「君たち、結婚してないよね?」
それを受け取るために、ここへ訪れたのだ
中也は、私が太宰さんと会うと知って「俺も連れてけ」と聞かなかった、ただのおまけ
「はいっ!?」
そう、ただのおまけ、の筈なんだ
あまりにさらっと云われたものだから、衝撃が後から後から襲い来る
そんな私の横では、中也が一瞬目を見開き、それからますます不機嫌そうな顔付きを見せた
「だ、太宰さん、どこからそれを」
「ふふ、私の情報網も優秀でしょう?」
「優秀過ぎて怖いです!」
これだから太宰さんは敵わない
その呑気なにこにこ笑顔の裏に、何を飼い慣らしているのか判らないのだから
お陰で顔が熱いし、心臓がうるさいし、どうしてくれんですか全く
「__ち、違いますよ、」
「ふうん?」
揶揄うような相槌が、私の口に勢いを付けた
「中也となんて、ある訳ないです」
たまたま姓が同じだから利用しただけ、ううん、利用してくれただけ
結婚なんてそんな、と理由を並び立てて否定した
まるで、自分に云い聞かせでもするように
「どうせ中也だって、私なんか嫌がりますって」
「……ふふ、そっかあ、あはは」
と、私が最後の一言を云い終えたところで、何故か太宰さんが笑い声を零した
そのうちお腹を抱え出して、「だってさ、中也」なんて笑うのを止めないから、ちらりと中也の方を伺ってみる
「え、中也? あの、どうしたの?」
「……青鯖、手前いつか絶対死なす」
不機嫌、苛立ち、怒り、と云うよりは
初めて見るような、瞳が深海のように悲しみに揺れる切ない顔で
思わず締め付けられた胸が、また大きく音を立てた
「Aちゃん、はいこれ」
「あ、有り難うございます」
太宰さんがようやく、私に資料の入った茶封筒を渡してくれるのと同時に、中也の腕が私から解けた
そしたら
___あれ、寂しい?
なんて、不思議な気持ちが過ぎって
消えた温もりに心の中で首を傾げながら、封筒の中身を確認して太宰さんにお礼を云った
「じゃ、じゃあ、帰りますね」
「あ、中也は待って」
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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