23 ページ23
·
「あっはは、中りみたいだね」
顔が引き攣る私と、怪訝な表情の中也
対して、私の無言の肯定を受け取った通話相手は、電話の向こうで朗らかに笑った
「___気に食わないなあ」
かと思えば、電話の声は一変して低くなり、不機嫌さが電話越しにも伝わってくる
「いやあの、太宰さんが、中也のことを毛嫌いしてるのは知ってますけど」
仕事なんだから、仕方、ない
「……太宰だと?」
しまった、と思い至った時にはもう「貸せ」とスマホが手から奪われていて
それは中也の手の中に
「___おい、クソ太宰」
電話の向こうへ投げ掛けられた中也の声は、これまた聞いたことのないほど、不機嫌なものだった
·
「げえ、蛞蝓の声がする」
「誰が蛞蝓だぶっ飛ばすぞ」
聞こえるのは、確かに俺の大っ嫌いな奴の声
青鯖の声ってだけでも気分が悪いのに、それがAのスマホから聞こえるってんだから、無性に腹が立って仕方ない
「手前、何の用でAに電話寄越しやがった」
「やだなあ中也、私とAちゃんの話なのだから、横入りなんて野暮なことしないでおくれよ」
野暮もクソもあるか、よりによって、何で手前が
苛々が募り募ってつい舌打ちしてしまう
「……そんなことより」
「あ"?」
突如、胡散臭さの抜けた太宰の声音
死ぬほど厄介な予感しかせず、嫌悪感を滲ませた挑発的な返事で応戦した
「どうしてAちゃんが君のこと、『中也』なんて下の名前で呼んでるの?」
ああ、ほらな、やっぱり
電話越しでも判る、元相棒の機嫌の悪さ
ふざけんな、機嫌の悪さなら俺だって負けてない
「そんだけ俺とAが親密だってことだろ」
勝ち誇るように、牽制するように、あわよくばこれを聞いたAが俺を少しでも意識してくれるように
思惑を詰め込んだ一言をぽつり
「……笑っちゃうくらい笑えない冗談だね」
と、珍しくドスの効いた声で返事した太宰、そんか見えない彼奴相手に火花を散らした
のも、束の間
「まあ良いや、Aちゃんにまた電話する口実が出来たようなものだし」
「は? 二度と掛けてくんなクソが」
「うふふ、じゃあねー」
「あ、おい、手前ッ」
ツー、ツー、と、無機質な音を奏でるスマホ
これがAのもんじゃなけりゃ、十中八九ぶっ潰しちまってたに違いなかった
·
678人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
【ヒロアカ】ヒーロー?とりあえず頑張ります。【文スト】
溺愛っぷりが尋常じゃない。【文スト】【太宰治】
続編:固有魔法…罪と罰【マッシュル−MASHLE】【文スト】【フョードル・D】
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ