【文スト】包帯アレルギー

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太宰さんの声が短く聞こえた後、私たちの間には沈黙が流れた

沈黙は重く、果てしなく長く感じて＿＿本当は一瞬のことだったのだけど＿＿俯く視線は一向に上げられず

だから、自分のすぐ横で鳴った鈍い音にも、過剰に吃驚してしまった



「やっと顔を上げたね」



太宰さんの云う通り、さっきまで動かなかったのが嘘のように、反射的に上を向いた顔

視界は砂色の外套から太宰さんの顔へと移り

ちらりと横を見やれば、先程のは太宰さんが手を私の脇の壁に突いた音だったのだと、やっと理解出来た

お姫様抱っこの次は、壁ドン

太宰さんがやると様になり過ぎる



「じゃあ君は、その包帯アレルギーとやらの所為で顔を赤くしてるの？」



私を見つめる目を細めながら、太宰さんが云った

太宰さんの口から改めて聞くと、何て莫迦げた出任せだろう、咄嗟の云い訳にしても不出来過ぎる

そう思いつつ、後に引き返すことは出来ず、項垂れるように頷いた



「他にはどんな症状があるんだい？」

「……む、胸がぎゅうっとなったり」

「それから？」

「ドキドキ、したり……」



さらりとタチの悪い質問

そしてこれまた巫山戯た返答

だけど元凶は凡て私な訳で、複雑な気分に襲われる


もういっそ、太宰さんを避けて過ごそう

『包帯アレルギー』なんて、この上ない口実だよ

もうこれ以降関わらないようにして、この数分間にあった出来事を風化させてしまえ

と、そんな思い付きは


「なら、治してあげようか」

「……え」


あっという間に崩れ去る



「だって君、与謝野さんの見習いだろう」



ああ、そうだった



「包帯アレルギーのままじゃ拙いんじゃない？」

「そ、れは……その……」



非の打ちどころの無い正論にしどろもどろ

完全に頭から抜け落ちていて、あたふたする私にお構いなしに、太宰さんは至って爽やかな笑みを見せる



「＿＿それに」


近い、近い、とてつもなく

少しの間違いで、キスでも出来てしまいそうな

そんな距離の先で口角を緩める太宰さんは、何とも云えず、ひたすらに綺麗で＿＿＿



「包帯アレルギーが治れば、もう私を避ける理由もなくなるものね？」



＿＿＿＿その瞳は、獣さながらに揺れていた



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