【リクエスト】その後の話 ページ27
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よくよく思い出してみれば、今日は非番の日でも何でもないのだ
朝、出勤途中の道すがら
太宰さんに云いくるめられたが故に、私がここに居る訳であるからしてつまり
「あの、太宰さん! 遅刻です……!」
もう冷めてしまったホットミルクの残りを、どうしてそんなにと思うほど、美味しそうに傾けていた彼は
途端に不機嫌な子供のように口を尖らせた
「やっと結ばれたばかりなのに、もう仕事のことなんて考えてるのかい?」
蓬髪にふわふわと寝癖を揺らす姿は、まさに寝起きの子供そのものだ
普段隙を見せない太宰さんの、どことなく無防備な一面に出会えた気がして胸が音を立てた
けれど、こうしている間にもきっと、国木田さんの怒りは膨らんでいるに違いなくて
「今日は二人でゆっくりしてようよ」
「だめですって、早く支度して下さい……!」
「じゃあ、Aちゃんが包帯を巻いてくれる?」
懸命に急かす私、聞く耳を持たない太宰さん
それでも諦めない私へ投げ掛けられたのは、そんな、私に拒否権の存在しないお願いだった
「ああ、あと、寝癖を直すのと、シャツの釦をかけるのも宜しく頼むね」
私が何も云えない間に、二つ、三つと増えてゆく太宰さんのご要望
これ以上どうしようもなくなる前に、何とか口を挟もうとするのだけれど
「え、っと、太宰さ___ 」
「判らない? 私は君に甘えているのだよ」
先読みされた質問に寄越された返事
云われたことは至って単純だけれど、理解が追い付いたのは、一瞬間を置いてからだった
「あ、甘えるって、どうして」
直後、動揺混じりに口を開けば
やだなあ、と
太宰さんは揶揄うような笑い声を零して
「好きな子に甘えるのに理由が必要なの?」
なんて云い返してくるのだから、息を飲むのと一緒に言葉までもが喉の奥に突っかえてしまう
だって、" 好きな子 " って、そんなのずるい
真っ白な包帯を握らされた私は、耳まで真っ赤になっているのだろう
「ふふ、君は鈍感だものね、判りやすくしてた筈の私の好意にも全然気付かなかったし」
とびきり甘く声色が響いて、合わせられた目が細められて、艶めかしく私を見据える包帯越しの微笑み
「私がどれだけ君を好きか、これから嫌というほど思い知ると良いよ」
今朝はいつになく、心臓に悪かった
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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)
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