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「ごめん起こした」
「いや、…はー寝てた…起きる」
「よかよ、寝てな」
「いや起きる…うわやだボタンしてなかった？わたし…やだーちょっと」
みっつめのボタンをいそいそとかけながら笑うA。
だめだ。こんな何気ない瞬間に、好きが溢れる。
母親、という経験値を孕んだ彼女が、今までよりどうしようもなく更に魅力的に感じるのだ。
こんなこと言ったらまたキャラ変だのなんだの、弄られるかな。
「泣いた？」
「んー…いや、まだこれからかなぁ今日は」
「ちょっとでも寝れたらよかね」
「でも泣いてくれたほうが安心かも、飲んでくれるしちゃんと。でも、」
明日も試合なのに、卓ちゃん寝れないかもしれない。ごめんね、───
だから、なにがごめんなんだ。
思い返せば、Aは ほのかがお腹にきたときだって、それがわかるまで、ごめんごめんって謝ってたな。
謝る必要、何一つないのに。
「おまえはさ、」
「はい」
「…俺も、父親やけん、もっと頼って」
「…うん」
「なんにもできんけど、…気持ちだけは、ありますんで」
「あは、何それ…ふふ、でもすごい嬉しい、ありがとう」
俺の、よく分からない決意表明(？)に、笑う彼女。
その頭にぽん、と手を乗せると、両手を広げるA。
おお、珍しい。なかなかこんなこと、ない。気がする。
「…。はい、ぎゅ」
迷わず抱きしめると、俺の肩口に顔を埋めた彼女が、くぐもった声で言う。
「…おとうさん」
…ほら、また。
子どもができると、夫婦の色々が蔑ろになるというのもよく聞く話だが、
それどころか。
それどころか、もっと好きになるし、どんどん魅力的なところが見えるし、俺はこのまま、どうなってしまうのだろう。
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作者名：まいち | 作成日時：2017年9月15日 3時
