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side #9







「はよざいまーす」


ロッカールームに入ると、すでに揃っている面々。
家に帰ってきた娘に夢中で、入りがいつもより遅くなってしまったのだった。





…正直、娘の可愛さがこれほどまでだとは。


元々子どもは好きで、
友人や知り合いの子どもには、会うたびに「連れて帰りてぇな」とか思うことはあった。

だけど、自分自身と、愛する人との子どもと言うのは…言葉には表せない程の愛しさがある。




「卓おはよ」

「おー。はよ」

「今日だっけ?Aちゃん退院すんの これから?」

「ああ いや、もう朝イチで帰ってきたわ」

「まじか、早いな…赤ちゃんも?」

「うん…」



話しかけてきた鍵谷は、浮かない顔をしていたらしい俺の様子を見て笑う。

近くにいたミヤさんからも、「おまえはなんつー顔しとんねん」と ツッコミが入った。



「女の子やんな」

「女の子す」

「可愛ええやろ?ウチ男やからな〜うらやましいっつーかなんつーか」

「もう…家からでたくないっすよね」




うわあ〜、あの卓が娘溺愛親父なっとる〜、
なんて、
わざとらしく右手で口元を覆い、
あからさまに皮肉めいた言い回しで、そんな言葉を投げかけてくるミヤさん。


いや、はい、その通りっす。

もはや否定もしない。



「溺愛親父さん、俺も赤ちゃん見に行きたいんすけど」


次のデー終わりとか〜、と話しかけてきたのは、遥輝だ。

確かに、娘が産まれてからは、なかなかタイミングも合わず、
チーム関係者たちは誰もまだ娘とは対面していない。

…結婚してから、というか同棲を始めてからは、
チームメイトを家に呼ぶなんてこともほとんどなくなった。

ふたりの家なわけだから、もはや所謂【愛の巣】である。
自分ひとりならいくらでも呼ぶけど。
当たり前のようにAのいる空間に、誰かが入ってくるのがなんかちょっと。嫌かな、というか。


だけど、娘がやってきて、

空間の色は変わり、自分の気持ちもまた変わったと感じている。
赤ちゃんて、人の心を優しくするし、気持ちも変えるんやなあって、心底思う。



「いいよ。次のデーいつや」

「えーいいの!ていうか溺愛親父さん次のデーすら把握しとらん!」

「…もうだめだーーー俺だめやーーーもうーーー」

「卓さんキャラ変しました?」





後輩に そんないじり半分な言葉をかけられたとしても、もうほとんど納得せざるを得ない。
所謂、親バカ。
認めてます。はい。





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作者名:まいち | 作成日時:2017年9月15日 3時

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