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それはそれは急な出来事で、

一瞬 自分を取り囲んでいたすべての音が止まる。






彼女の話だと、


俺があの部屋を後にして数十分ほど経たぬうちに
チクリチクリと緩い鈍痛があり、

その更に数時間後に破水。






まだ叫びたくなるほどの本格的な痛みはないものの、

子どもの通り道は少しずつ開いており、

もうこのまま時を待つような状態。







淡々と話す彼女だが、

その状況と次々飛び出す専門的な用語は、
正直こちらにしてみれば想像を絶するものだった。









つい先ほど「産まれる」などとおちゃらけていたのが、こんなにも早く現実になるなんて。









「待、…すぐ、行く」

「たぶん全然ゆっくりで大丈夫、まだ」

「タクシー呼ぶわ、すぐ行くから」








くそ、どうして今日に限って、家ではめったに飲まない酒なんて飲んだのだろう。

すぐに出発できないもどかしさに足踏みをする。







(…ああ、明日もゲームや)






この場に及んで、冷静に現実を見たりなんかして。






電話を切ってすぐ上着を羽織って、

財布だけ持って、…そうだ、先日賢介さんに見立ててもらったビデオカメラも持つ。



これから迎える瞬間とこれからの未来のために買ったもの。

一度だけテスト感覚で、お腹の中で護られている様子を映したことがあったが、
これからはいよいよ本格的にお揃いの記憶が増えていくのだ。

それを考えただけで早くも瞼が熱くなる感覚がした。









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作者名:まいち | 作成日時:2017年9月15日 3時

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