・ 太宰の過去(4) ページ33
「君の母親が、死んだからさ」
「………っ
……………嘘っ」
そんな表情をするから見せたくなかったのに。
「父親も弟も、君の大切な人は皆死んだ。
君を1人、残して…」
───リイナは泣き出した。
僕はその顔を見て……何故かふと思いつく。
あぁ、そうだ。
私がこの子をマフィアに入れれば良い。
行くところもないだろうし、何よりも…
この異能を私の前で使わせよう。
そうすれば───
『私はもっと『死』について知れる』
人は死ぬ前にどんなものを美しいと思うのだろう?
どんなものに悔いを残すのだろう?
人を何度もこれから殺してしまう彼女はどんな
【人間の本質をもっと見ることができる】
いいじゃあないか。
そしていつかは僕に───
「だから、君はこれから1人で生きていくことになる……それでもいいのかい?」
僕は彼女をむくりと起き上がらせて、手を目の前からなくす。
ぼんやりとした目は僕だけを見ているようだった。
「………いやだ、
私……1人じゃ生きられない、そんなことになるなら、いっそ私を………殺して」
「………
………ふふ、そうかい。
なら、選ばせてあげようか?
君は今ここで僕に殺されるか…
───僕についてくるか」
「いけない…私には守られるがないから、大切なものもないから………」
「なら、僕が大切なものになってあげようか?」
その時だ、僕がリイナに
「え………」
そうだ、リイナを僕の部下にすればいい。
そうしたら、彼女の異能をいつでも見られる。
「簡単なことじゃあないか。
……それとも、君は僕に殺されたい?」
首を横に振るリイナ。
本当は…君は死にたくないんだね。
「なら、今日から僕が………
君の大切な人だ。僕の名は太宰治」
僕は彼女の首周りに腕を回して、
怯えている子供をなだめるかのように優しくリイナを抱き寄せた。
リイナの───冷たい体温ががじわじわと伝わり、雪の中での冷たさが更に増す。
「僕が君を守ってあげるよ」
もう1つの偽りの言葉に合わせてリイナの
頬に雪に似た雫がつたる。
「………っ、く……太宰………っ」
彼女の異能では僕を殺せないことは分かっている。けれども………
「……リイナ」
これから、この異能を見ていればきっと僕は…
…………僕は不敵に笑った。
───雪が強くなる。
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時