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・ 太宰の過去(2) ページ31

「………ッ、リイナ!?」


そう叫びながら、彼女の体に触れた男。

その刹那…
男が切り倒された大きな木のように倒れる。



そうして、色味を帯びていた男の肌はみるみるうちに、色彩を消し……


やがて干からびたような姿をした。


そして、そんな男と変わるようにして、


───生命を宿らせた向日葵の花が、男の倒れた地面の上から咲いたのだ。



その花は生命を光らせるようにして
雪の降っている空へと背を伸ばす。


冬の時期で、…ましてや、雪が降るこの季節に向日葵が咲くなどあり得ない光景だ。


「………⁉え……なんで、
なんで……!?……父さん、父さん!」


色彩を失った男はピクリとも動かない。


そのようすに
見入った僕は彼女に釘付けになる。



よく見ると、彼女の周りには
タンポポ、向日葵、紫陽花……といった花が咲き誇り小さな花畑を作っていた。

 

僕は更に興味が湧いた。


冬に咲いた珍しい花たちよりも……



………花畑の花と同じ数の死体が彼女のあたり一面に転がっていることに。



「……お、……お姉ちゃん……?
お姉ちゃん……なんで!なんで…‼」



近くに少女と座り込んでいた小さな少年が恐怖からか泣きだして彼女の手を握る。



「………っ!あっ………だめ、
私に、触らないで……!!!」



そう叫ぶ彼女の声は届かず、
少年は彼女の手を握ったまま、男のように身体を倒す。



色彩を失う少年。その少年の空いた掌からは
小さな小鳥がちゅんちゅん、と小さく鳴き
彼女と少年の周りを飛び回った。


静まり返った辺りは小鳥のさえずりだけが聞こえる。








…………美しかった。







その光景が今まで見たどんなものよりも。
どんな『死に方』よりも美しかった。




気づいたとき、僕はゆっくりと笑顔を浮かべながら彼女に歩み寄っていた。
 

………あのようにラクになれた(死ねた)なら
僕はどれだけ幸せだろう。


自然と笑みが零れる。


…あぁ、血すらも出ていない。
蝿もたかっていない。
美しいままで、痛みも感じず……
なんて理想的な死に方なんだ。


彼女は笑みを浮かべた僕に気づいたのか
怯えた表情を見せた。


きっとまた、人を殺してしまう自分に怯えているのだろうと僕は思った。


僕が彼女の目の前に立つと彼女は案の定、
恐怖に似た声を漏らして僕から離れようとする。



「………ひっ…
こ、こっちに来ないでよ……!!
わ、…私に触らないで‼」

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設定タグ:太宰治 , 中原中也 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時

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