愛してる、愛してない【文スト】 (ページ30)

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・　太宰の過去ページ30

「…あぁ、優秀な部下を捨てるのは少し心残りもあるが…承知しよう」

誰か一人がリイナに言えば、私たちは全員殺される。

きっと今の目はあの時のリイナみたいに真っ黒なんだろうなと何処かで感じた。

「……雪の日だった。
その日の私は、仕事に出かけていた」

太宰さんは落ちついた声で、
けれども曇ったような声で続けた。

〜太宰視点、回想〜

───15歳。

マフィアに入ってから少したった時の事だ。

その日の前日は雪が降っていた。
それだからか僕の足元一面には雪が積もっており…時折、靴に雪が入るのを僕は嫌った。

ふと、近くに村があるのに気づく。

村と言っても家が少し並んでいる集合住宅みたいなものだけど。

この時代にこんなところがあるのか、
と僕は家々の間を通りながら雪を踏む。

そこにも多くの雪が積もっており、正直、僕にとっては邪魔でしかなかった。

「……ち、違うの…ねぇ、これは…」

ふと耳に入ったのは子供の声。
女性だろう、でも私は興味がなかった。

だから、何処から聞こえているんだろう、
なんて辺りを見回すつもりにもならない。

ザクザク、ザクザク…と靴が雪の踏む音。

前を向くと、さっき聞こえた声の主である人物が雪の上に座り込んでいた。

その近くには小さな少年と大きな男がいた。

「……はぁ」

僕は溜め息をつく。
…正直、鉢合わせになるなど、ごめんだ。

興味のないこと以外を僕の目に入れたくない。そう思って進行方向を変えようとした僕は、

───刹那の時にして視界を奪われた。

___彼女に対しての興味が生まれたんだ。

「………ッ、リイナ！？」