・ 見知らぬ人(2) ページ28
「…最下級構成員なんです、実は」
「え……!」
なら、異能を持ってない…?
でも、それにしては怪しいような……
ますます怪しい…と感じてしまう私にその時、
美江さんはそれを紛らわすかのように私に問う。
「そんなことよりも、……貴方、プリズナーの情報が欲しくないかしら?」
「………ッ!プリズナーの…
…何であなたがそれを」
私の思考回路を一気に止めたその言葉。
彼女が怪しいかなど関係なしに、
プリズナーの情報に私は犬のように食いついてしまった。
だってこの情報があれば…………
太宰に褒められるかもしれない、
そして───捨てられないかもしれない……。
「ええ、私もあることを使って色んな敵組織の情報を手に入れましたもの。
勿論、貴方がプリズナーを追いかけていることも。
…ふふ、簡単なことですよ?
但し……それをするのはあなたなのですが」
不敵に笑みを浮かべる美江さん。
その表情は…何処か太宰に似ていた気がしたけど………気のせいだろう。
そんなことよりも、私はその方法が知りたくて堪らなかった。
太宰に褒められたい…褒められたい……
頭の中はその言葉で埋め尽くされるばかり。
「お願いします…私にっ…
その方法を教えてください…っ!」
私は頭を美江さんに下げていた。
確か、頭を下げるのは相手にお願いするとき…だったはずだ。
「ええ、もちろんです
それでは今から行きましょう」
美江さんはスっと無駄のない動きで立ち上がる。
「……行くって、何処に……」
「あぁ、心配することはないですよ。
…少し怖いかもしれませんが、慣れてしまえば平気なものです、むしろ楽しいと感じるようになりますよ」
美江さんはゆっくり私の方へと振り向く。
「………『貴方がいれば』
簡単にできることですから」
美江さんの茶色の目には
うっすらと私以外の明るい光を写していた。
その光は仄かなピンク色をしていた。
ただそれは太宰とはまた違う黒さをも反射している。
「は…はい」
怪しいと感じながらも、
私は『餌』に釣られて彼女についていった。
太宰に捨てられないのなら、
私はそれで……太宰に褒められるのなら……
太宰に褒められたい………褒められたい……
頭の中を埋め尽くすそれらの言葉を抑えることなく、私は本能のまま…バーをあとにした。
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時