・ バーにて ページ22
バーにて。
〜リイナ視点〜
………捨てられた。
本当に捨てられたんだ…私。
私は真っ青な顔をして飲み物を入れたグラスに何度も触れる。
辺りが真っ暗の中怪しく光る1つの店。
大人が聞くような音楽がかかったその店には
店主を除き私以外の客は一人もいなかった。
ここはポートマフィアが経営する店の一つ。
ここは私にとっては特別な場所でもあった。
このバーに来たのは太宰たちが首領の元に向かってすぐのことだ。
普段でも明るくないその場所は今の私だけにある場所だと心底感じる。
どうすればいいの…私は、どうしたら……
殺されることが嫌な訳ではない。
───太宰の隣にいられなくなるのが嫌だ。
私が指を早めるほどカランカランとグラスが何度も何度も小さく鳴いて、
余韻が残る間もなく、私の耳に届く。
それと同時に私の中にある小さな感情が
風船のように膨らんでいく。
久々にその感情…苛立ちというものを感じた。
自分に対して苛立って苛立って…
何も出来ないから、役に立たないから捨てられるんだ。
……なら、私はどうしたらいいんだろう。
あぁ、また同じような無限ループを繰り返している。こんなとき、太宰はどうすれば良いって言ってたんだっけ。
太宰は───太宰は───
「……珍しい客人だな」
階段の方からふと、見知らぬ声が聞こえた。
声の主は階段の暗闇から暗黒の中に閉ざされており、姿が見えない。
「……誰?」
私は目を凝らして声の主を目でおう。
ようやく光に照らされた声の主。
彼はカツカツと靴音を立て、姿を現した。
その人の太宰とは真反対の赤毛がまず目に映される。それに加え、黒地にストライプのシャツ、狐の皮の色のようなベージュのコートが特徴的な男性だった。
「俺はポートマフィアの
最下級構成員、織田作之助だ」
風のように颯爽と彼は私に名前を伝えた。
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時