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山下「かけそばを二つください」
「かしこまりました」
娘にそう注文すると、娘は厨房で忙しなく動く二人の男女に駆け寄った。よく見ると、店内には娘の他に二人の雇い人がいた。
山下「街は賑わってるね」
『そうですね』
山下「Aさんは、その……炎柱の最期を見届けたの?」
『……はい』
「お待たせ致しました」
雇い人の青年がかけそばを持ってきた。あの時と同じ、おろし大根と葱が乗っているだけのシンプルな蕎麦だ、
山下「『いただきます』」
二人は手を合わせる。
そして
山下「……うまい」
『美味しい……』
出汁の旨味と鰹節の香りが口の中いっぱいに広がり、二人は夢中で食べた。
煉ーーうまい!!ーー
山下「『……っ、!!』」
店内に、杏寿郎の“うまい”が響いた気がしたーー。
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山下「じゃあ、俺はこれで」
『はい。すみません、ご馳走になってしまって』
山下「良いんだよ、俺がしたくてやった事なんだから。気にしないで」
二人は街中を歩く。以前より活気が戻った街は、笑い声が響いていた。
山下「Aさん」
『?』
山下「何かあったら俺に遠慮なく相談して。生きているうちは、……だけど」
『山下さん……』
山下「俺、同期の隊士から聞かされた噂があって。音柱様には“泣き虫継子”がいるって。その子の特徴は美しい夕焼け色の髪を持つ女の子……って。あの日、君を人目見て君があの“泣き虫継子”だって分かった。でも違った」
『……』
山下「噂とは違ったんだ。君は泣き虫でも何でもない。とても強くて優しい女の子」
『……っ、』
山下の優しい言葉にAは泣きそうになった。
山下「………ごめん。長く話しすぎたね。でも俺は、君の味方だから。生きている間は、君の相談に乗ってあげることが出来るから。だから、………また、いつか」
そう言い、山下はその場を去って行った。
“生きている間は”
“またいつか”
山下の言葉が、Aの心に優しく響いた。
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ななこ(プロフ) - ミアさん» コメントありがとうございます!ドラマCDの胡蝶姉妹、良い話ですよね(泣)分かりました!書かせていただきます! (2022年1月31日 22時) (レス) id: f3c05740c2 (このIDを非表示/違反報告)
melody(プロフ) - はじめまして!読ませて頂きました。続きがとっても気になります。更新楽しみにしてますのでよろしくお願いします。 (2022年1月31日 21時) (レス) @page38 id: 648912d438 (このIDを非表示/違反報告)
ミア - ドラマcdで胡蝶三姉妹のような宇髄家の過去の日常をリクエストします! (2022年1月31日 21時) (レス) @page38 id: baa6bfc0d1 (このIDを非表示/違反報告)
ななこ(プロフ) - 月の舞さん» コメントありがとうございます!キメツ学園はいつか書こうかな、と思ってたので、番外編みたいな形で書かせていただきます!これからも応援よろしくお願いします! (2022年1月31日 19時) (レス) id: f3c05740c2 (このIDを非表示/違反報告)
月の舞 - ななこさん» 無限列車編 終わりましたね…。いよいよ遊郭編か、楽しみです‼️リクエストいいですか?キメツ学園編も見てみたいなぁ〜。遊郭編の後でも構いません💦 更新頑張ってください‼️応援してます (2022年1月31日 12時) (レス) id: 6295bdffb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななこ | 作成日時:2022年1月12日 14時