恋する乙女よ、嘘をつけ。 (ページ28)

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何がいいかな。
北欧風の落ち着いた雑貨屋さんに入る。
小さなマグカップに、おしゃれなクリップ。迷うなぁ。どんなのが似合う……

「…何しとん？」
「わっ、吉野、先輩、」

後ろから声をかけるというのは吉野先輩の得意技らしい。心臓に悪い…

「友達のプレゼントを買いに…」
「え？友達おったん？」
「いますよそりゃ」

いつも幼馴染くんとおるからおらんと思ってた。なんて言い出す先輩。私にだって女友達の1人や2人ぐらいいるって。

「そういう先輩こそ。会うときいつも1人じゃないですか。いるんですか？友達」
「まぁ。おるよ」

先輩はそういうと少し悲しそうに笑った。

「…先輩？」
「ん？」
「ぼーとしてましたよ。」
「あーごめん」

「何考えてたんですか？」
「ん？昔の話」
「なんですか、それ」

「あ、俺これがいいな」
「先輩？ちょっと聞いてるじゃないですか」
「ん？俺の誕生日？6月18日」
「誕生日の話じゃないですって」

からかってくる先輩はいつもみたいにあひゃひゃと笑う。

「そういえばAちゃん」
「なんですか」
「“運命”と“偶然”って何がちゃうと思う？」

運命と偶然…？どっちも同じ感じがする。

「何が違うんですか？」
「…っふ。そのうちわかる」

ちょっと鼻で笑った先輩は嬉しそうにこちらをみる。
わけわかんない…
結局モヤモヤしたまま。

「んーほな。帰るわ」
「先輩…！」
「また音楽室で」

マグカップを置きながら笑って店を出ていく。さっきの質問の答え、気になるんですけど……
もう、店からでるってときに先輩は少し振り返って

「…今日は、偶然出会えてよかった」

それだけ言って帰った。

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