百八十七。誰より特別 ページ7
心拍数が上がる
振り切ろうと試みたところで、彼の私を抑える力はビクともしなくて
今更、智くんも男の人なんだってことを思い知る
.
「お願い、やめて…」
そんな最中も、彼の顔はどんどん近づいて来て
もう、唇が触れてしまう＿＿＿
.
『俺のこと、弄んでんの？』
唇が触れる
そんなギリギリのところで止まった彼が、口を開く
『男の前で簡単に泣いて』
「…」
『俺のこと、弄んで楽しい？』
「なんで…そんなこと『俺は』」
『俺はずっと、お前だけ見て来たんだよ』
「…」
『何回もそう言ってるだろ』
.
“A！はぐれちまうから、ちゃんと手握ってろよ”
“もーお前は、本当泣き虫だな”
“やっぱAが作る牡蠣フライが一番だわ”
“大丈夫だ、お前はひとりじゃない”
“Aは俺が一生守ってやるからな”
“大きくなったら、Aは俺の嫁さんな”
.
『もう、1ミリも望みがねえんなら』
「…」
『こんな隙、俺に見せるのやめてくれよ』
「…」
『頼むから、俺が付け入る隙なんて作らずにしっかり立ってくれよ』
「…」
『過去の女から言われたことくらいで』
「…」
『こんな簡単に、揺れるなよ』
.
“俺たち、幼馴染って関係から変わる事。もう、出来ねえのかな？”
『俺の身にもなってよ』
「…」
『もういい加減、俺の心の中から出てってくれよ…』
.
ここまで吐露して、智くんはその手に込める力を緩める
.
彼を好きになっていれば
本当はもっと、幸せになれたのかもしれない
でも…でも、
あなたは、私にとって＿＿＿
.
「…お願い智くん、そんな怖い顔しないで」
ようやく緩んだ彼の手から、自分の両手を抜き出し
顔を合わせないよう、智くんの頭を包み込んだ
今まで彼と過ごした中で、一番近い、初めての距離に
今伝えられる精一杯の思いを込める
「いつまでも、智くんに甘えてばかりでごめんね」
『…』
「でも…私にとって、智くんは誰より特別なの」
『…』
「それがたとえ、恋じゃなくても」
『…』
「子供の頃から、ひとりじゃないって思えたのは。智くんがいてくれたから」
『…』
「幼馴染とか、恋とか、そんな言葉で片付けられない」
『…』
「私にとってたったひとり、誰より特別な人なの」
『…』
「だから」
「智くんの中から出ていけなんて、言わないで＿＿＿」
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miihoo(プロフ) - こんにちは 以前コメントさせて頂いた者です。また読み返してみました。お仕事お忙しいのでしょうね。気長に更新待ってます。大好きなお話なので。 (2022年6月12日 18時) (
レス) @page9 id: 1ac01d1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 初めてコメさせていただきます。智くん担の私としては…やっばり智くんと結ばれて欲しかった。こんなにも主人公ちゃんを心から想っている智くんの気持ちが切ない😭 (2021年10月16日 11時) (レス) @page9 id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年10月10日 15時
