百八十三。お人好し【昌】 ページ3
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このところ、Aの見習い時代を知らない常連客が
こぞってこう口にする。
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『松岡くん、どこであんなべっぴんさん見つけて来たの！？』
今日もオヤジ連中が、厨房と店内を行き来するAに釘付けになって
カウンター越しで魚を捌く俺にそう問い詰める。
「元はうちにいたの。3年前に独立して、今は東京に自分の店持ってる」
『へ〜、じゃあなんでまたここに？』
「俺が頼んでちょっとだけ手伝いに来てもらったんだよ。お陰様で人手が足んないんでね」
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ちょうど、1ヶ月くらい前。
“昌宏さん…少しの間、またお世話になっても良いですか？”
電話越しの、か細い声を耳にして
懐かしい健気に努力するAの姿が蘇る。
東京で、なんかあったのか？
なんでか自分でもわかんねえけど、それを尋ねるのは躊躇われた。
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『じゃあ、そのうち東京に帰っちゃうのかい？残念だな〜』
店奥のテーブル席で、今日も穏やかな笑顔で客にサーブする彼女を眺める。
『白河さん、煮付けのお味はいかがですか？』
『うん、今日も抜群だよ。Aちゃん、また腕あげたねぇ』
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未熟も未熟
20歳手前でまだまだ大人にもなりきれず、板前としても一人前と呼べるに遠く及ばない少女だった君は
その後もブレることなく己の道を歩み続けて
しっかり自信を身に纏った、良い料理人になった。
そして…想像通り、良いオンナにもなった。
それは、やっぱり
このオトコがそうさせたのもあるんだろうな。
と、俺は勝手に思っていたんだけど。
どうやら、そうではないらしい。
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『いや。Aは、他に付き合ってる奴がいるよ』
そう呟いたカウンター越しの智は、どうってことないって顔で酒を飲む。
「お前なぁ…お人好しにもほどがあるぞ」
Aの見習い中、足繁くうちに通ってたコイツとは、なんとなくウマが合ってすぐに打ち解けた。
そんな涼しい顔を装ったところで、俺にはバレバレだっつーの。
『まあでも、最近は割と吹っ切れてるよ』
気が抜けたように笑ってそう言うけど、『ただ…』と口にして、こう続けた。
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『おおよそだけど。Aがまたここに来てる理由が分かった気がしたから、気になって』
そう聞いて、調理の手を止めて顔を上げると
『智くん、牡蠣フライ作ろうか？』と、
他客のサーブを終えたらしいAがこちらに駆け寄って来たから
俺は思わず、その真意を尋ねようとした言葉を飲み込んだ。
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miihoo(プロフ) - こんにちは 以前コメントさせて頂いた者です。また読み返してみました。お仕事お忙しいのでしょうね。気長に更新待ってます。大好きなお話なので。 (2022年6月12日 18時) (
レス) @page9 id: 1ac01d1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 初めてコメさせていただきます。智くん担の私としては…やっばり智くんと結ばれて欲しかった。こんなにも主人公ちゃんを心から想っている智くんの気持ちが切ない😭 (2021年10月16日 11時) (レス) @page9 id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年10月10日 15時
