百八十一。六本木【翔】 ページ1
『部長、最近は弁当じゃないんですね』
Aと会えなくなってから、気が付けば早1ヶ月が経とうとしている。
『Aさん、忙しいんですか？』
お昼時
今日も財布片手に席を立とうとした俺を見て、自分の弁当を広げながら生田がそう言った。
「あぁ…うん、ちょっとね」
.
“休業のこと、連絡せずごめんなさい。
身体は何ともないので心配しないでね。
かなり冷えてきたので、翔さんも体調には気をつけて”
あの日
やっぱり電話での返事はなくて。
もしかしたら、声が聞けるかもしれない。そう抱いた淡い期待は直ぐに砕かれた。
.
『部長。◯◯社との商談、ご同行願えますでしょうか？』
その日の午後
あれからこれといった接触のなかった麻里奈から、不意にそう申し出がありハッとする。
「了解、じゃあ…この日程から先方にアポ取ってくれる？」
いくつか候補の日時をピックアップして、麻里奈に提示する。
『承知しました』
その客先を担当しているのは二宮と麻里奈。
先日生まれた子供のために3週間の育児休暇を取得した二宮の代わりに、俺が同行することになった。
.
「…では、本条件にて正式に売買契約締結とさせて頂きます。今後とも、引き続き宜しくお願い致します」
後日、大詰めを迎えていた新規商談も無事に成立し、俺と麻里奈は会社に戻る帰路に着く。
まだ帰宅ラッシュ前の日比谷線の電車内は人もまばらで、空いた先に2人で腰掛けた。
互いに何を喋るでもなく、心地悪い無言が続く。
“次は、六本木＿＿六本木＿＿、出口は…”
六本木
ニューヨークに渡る前、俺が住んでいた場所。
よくこうして2人で電車に揺られて、六本木で降り立ったものだ。
思わず…隣の麻里奈に目を見遣ると
その目を閉じて、両膝の上に置かれた両手をギュッと握りしめていた。
なあ、麻里奈。
どうしたら、俺たちのこの絡まった糸、キレイに解けるんだろうな。
その手をそっと握ってやることも
その肩を抱き寄せてやることも
もう俺には、できねえよ＿＿＿
.
そう思い巡らせていた次の瞬間、『あぁ、もう！』と言っていきなりパチっと目を開いた麻里奈にもれなく驚けば
『悪いのは……全部、私だわ』と伏し目がちに言った。
「悪い、って…？」
そう尋ねた俺の問いには答えず、彼女は思わぬ言葉を口にした。
.
『ねえ。今度の週末、ちょっと遠出しない？』
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miihoo(プロフ) - こんにちは 以前コメントさせて頂いた者です。また読み返してみました。お仕事お忙しいのでしょうね。気長に更新待ってます。大好きなお話なので。 (2022年6月12日 18時) (
レス) @page9 id: 1ac01d1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 初めてコメさせていただきます。智くん担の私としては…やっばり智くんと結ばれて欲しかった。こんなにも主人公ちゃんを心から想っている智くんの気持ちが切ない😭 (2021年10月16日 11時) (レス) @page9 id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年10月10日 15時
