百六十。どうやって【麻】 ページ10
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…ちょうど、この辺り。
けやき坂を登る中間の交差点で歩みを止める
3年前の冬
半年ぶりに帰国した翔と、なんとかカップルらしいことでもしなくちゃ、と無理をするようにイルミネーションが煌めくこのけやき坂を並んで歩いて
重い空気に耐えかねるように
この交差点の手前で、私は彼に別れを告げた。
“…そう。おめでとう”
“松本なら、きっと幸せにしてくれるよ”
もう分かりきっていたその反応だけど、さすがに寂しかった。
「…嘘でも…他の男のところに行くなって…ッ、一度でいいから、ッ…言ってくれたって良かったじゃない…」
もしもあの時、引き止めてくれたら
記憶を辿って思わずそう口にすれば、この目に簡単に涙が溜まる。
もういつぶりかも分からない、翔の唇の感触
ついさっきまで感じていた…翔の胸の温もり
彼のラストノートが、私の心を締め付ける
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“彼女、料理人なんだ”
2人きりのオフィス
翔の背中に手を回し、その胸で涙を流し続ける私に
彼は最後まで抱きしめ返してくれることはなくて
変わりにそっと、私を諭すように話し出した。
“飲み屋の女…確かに、人によってはそう見えてしまっても仕方ないのかもしれないけど”
“彼女の料理人としての覚悟はそんなもんじゃない”
“寂しい人で溢れ返った東京の街で、自分の料理がそんな人の心を温められたらって”
“Aは、その強い思いを持ってあの店をやってる”
翔の言葉に
出来心で訪ねた、代官山の小料理屋での彼女を思い出す
“俺も…Aの料理に救われたんだ”
込み上げる嫉妬心が隠せないくらい
女の私でもドキッとするほど、すごく綺麗な人だった。
この胸にその彼女が抱きしめられることを思うと、余計に涙が溢れ出す
“…恋愛って。お互いの生きる領域を尊重して、その上で心を通い合わせることなんだなって”
“この歳になって、俺もやっと気付いたんだ”
…今から、私と、そういう関係にはなれないの？
“麻里奈”
縋り続ける私に頑なに触れようとしなかった翔が、そっと私の両肩に手を置いて、その胸から引き離した。
“6年も、俺の不甲斐無さで引っ張ってごめん。どうか…わかってくれ”
“俺は、もう前に進んでる。お前にも、前に進んで欲しい”
深夜の六本木、寂しげに灯る幾つかの街灯の先
心も身体も、まるで3年前のこの場所から取り残されたようで…
私、このままどうやって、前に進めば良いの？______
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
