百五十四。残業 ページ4
『ごめんね、遅くまで長居しちゃって』
.
温かい言葉に、堪えきれずに涙が溢れたところで
二宮さんは『涙を見せる相手は、俺じゃなくて翔さんじゃないとね』と、腰を上げてジャケットを羽織り、帰り支度を始めた。
「二宮さん、今日は本当にありがとうございました。重かった心が…少し軽くなりました」
二宮さんとはいえ…仕事中に涙を流すなんて公私混同もいいところだ。
『俺、だてに3年間この店に通ってないからね。Aさんとの付き合いの長さでは翔さんよりリードしてるし♪』
いつもの二宮さんの悪戯な笑顔につられて、私もつい笑みがこぼれる。
『それと…最後に一つだけ』
私から鞄を受け取った二宮さんは、こう言った。
『Aさんと麻里奈ちゃん、どちらかだけに肩入れするってのは正直言って俺にはできないし』
『もうこれ以降は当事者たちの問題だと思ってる』
それは、ごもっともだ。
『何度も言うけど、翔さんは本当にデキた男だから。時には素直に胸の内、ぶつけてみな』
『あの人、そんなやわなことで簡単に意思が変わるような男じゃないから』
そう言って帰路についた二宮さんを見送ると、大通りに出たところで思い出したようにこちらを振り返り
『最初に言ったけど、早速また来週も来るからよろしく〜！』と言い残して、タクシーに乗り込んだ。
二宮さんの言葉から感じ取れる励ましに、またひとつ救われる。
.
“今晩、俺んち来れる？”
間もなく日付が変わる時刻。
空席になった店内を片付けてタクシーに乗り込み、赤坂の翔さんのマンションに向かう。
行き先を告げて発進したところで、夕方からケータイを開いていないことに気が付いた。
見ると、22時頃に不在着信と未読メールがそれぞれ一件ずつあって、どちらも翔さんからだった。
“お疲れ様。ちょっとトラブルで残業が長引いてる。もしAが先に俺んち着いたら、気にしないで寝てて良いからね”
さっき二宮さんも最近忙しくてって仰ってたな。
翔さん、ちゃんと息抜きできてるのかな？
あのメールの時間で残業なら、ひょっとすると夕食も摂れていないかもしれない。
何か作っておこうか…必要なければまた明日にでも食べれば良いし。
そんな風に考えている内にタクシーの窓から翔さんのマンションが見え始めた。
カードキーを翳して部屋に上がると
やっぱり翔さんは、まだ帰宅していなかった。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
