百六十七。好きだよ ページ17
『少し歩こう？』
ホテルのバーを後にして
“送るから” ときかない翔さんと共に乗車したタクシー
自宅の代官山より少し手前で降車し、旧山手通りを彼と並んで歩く。
6月の半ば、同じようにこの道を並んで歩いて、お付き合いが始まったあの日から気が付けば5ヶ月あまりが経っていて
夜道を歩くにはすっかり肌寒い季節となった。
そんな風に考えていると、不意に彼の左手が私の右手を掬い取るようにそっと握る
『今日は…こうしていても、良いよね？』
“距離をおきたい”
迷いの表情を浮かべながら困ったように笑う
私の様子を窺うそんな翔さんに、申し訳ない気持ちになる
手を繋いだまましばらく無言で歩みを進めて
気が付けば私のマンションの一角が見えるところまでやってきた。
『なんか…付き合った日のこと思い出すな』
そんな一言に、翔さんがあの日にくれた言葉が蘇る
“もう、一人で頑張らなくていいんだよ”
“俺がいるから”
あの晩
この世にこんな幸福が待っていたなんて……そう、心から思えたんだ
『…ほんと泣き虫だな、Aは』
どうにか堪えようとしていた涙が、あの日を追懐してたまらずに溢れ出す
進め続けた歩みをマンションの目の前で止めて
それを合図に私の両肩に手を置いた翔さんが、互いを向き合わせるようにした。
『もう一度言う』
『俺はこの先ずっと、何があっても、A以外考えられないから』
私の頬に触れる指で、いつもそうしてくれるように優しく私の涙を拭う
『好きだよ』
そう言って微笑む彼につられるように、私も思わず笑みが零れる
『俺のそばに戻ってきてくれるって…信じてて良いんだよね？』
私だって、あなたしか考えられない
だけど…
「私が料理に向き合う間…翔さんは、彼女ともう一度向き合って」
「きっと、そうするべきだから」
眉を下げて視線を落とす翔さんの頬にそっと触れて
祈るようにもう一度告げる
「私、今よりもっと自信を付けられたら。きっと、あなたのそばに戻れる。だからどうか…この我儘を許して欲しい」
「その為に頑張るから」
私の言葉に、彼が視線を上げる
「胸を張れる私になれたら…もう一度、翔さんのそばに私を置いて欲しい」
彼を信じて、私も想いに応えたい
「好きです、翔さん」
あなたのそばを離れて頑張る為に、力が欲しい
その一心で、そっと彼の唇に口付けると
勢いよく私を引き寄せ、力強く抱き締めた_____
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
