やさしい食卓三。【SS】 (ページ5)

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六十五。もう少し一緒にページ5

『ちょっとお手洗い行って来るね』

櫻井さんが私にそう言って、席を外す。

すると、彼が席を立ったのを見て、佐藤さんが私たちのテーブルにやって来た。

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『どうでした？料理』

「あっ、もう本当に美味しかったです。こんなに美味しいイタリアン、久しぶりに戴きました」

私がそう言うと、佐藤さんはニッコリ笑ってこう言った。

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『翔、何度か来てるけど。女のコ連れて来たの、今日が初めてだよ』

…え？

『アイツ、良い奴でしょ』

「あの…」

『仲良く、してやってね』

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そう

こういうお店をやっていると、人の感情に敏感になるものだ。

「…はい」

そう応えた私に、佐藤さんは今日一番の笑顔を向けてくれる。

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『じゃ、またね隆ちゃん。ご馳走様』

彼に続いて私も佐藤さんに挨拶をして、店を出る。

「櫻井さん、ご馳走様でした」

彼はどこまでもスマートで、やっぱりここでも私の知らない内にお会計を済ませていた。

『どういたしまして』

そう言うと、私に優しく微笑む。

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『あのさ、少し帰るの遅くなっても平気？』

時刻は夜十時を回ったところで、不安気な顔した櫻井さんが私に問い掛ける。

「あ、はい。大丈夫です」

店をやっている手前、普段、朝はそんなに早くない。

『じゃあ、もう少し、一緒にいても良い？』

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“もしかしたら、一番におめでとう言えるかな？”

彼の真っ直ぐな言葉が、胸に刺さる

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「…はい、私ももう少し、一緒にいたいです」

そんな彼に応えたいという気持ちで

私も勇気を出して、彼にそう伝えてみる

その瞬間

彼は少し目を細めて、切な気な表情をした様に見えたけど

それは直ぐに、優しい笑顔にすり替わる

『ちょっと行こうと思う所があって』

そう言った彼に続いて、私たちはまた、並んで歩き出した。