七十九。引き下がれない【智】 ページ19
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別に今日の今日、言おうと思った訳じゃない。
だけど
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“うん…凄く素敵。ありがとう”
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募る不安が、彼女への思いを突き動かすようで
気付けばもう、止まらなくなっていた。
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『…智くん、本気で言ってるの？』
やっとの事で言葉を発した、と言った所の彼女は
尚もまだ驚いた表情を隠せないでいる。
「本気だよ」
「お前は、どうなの」
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張り詰めた空気に耐えられなくて、彼女に答を促す
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『…智くん』
長い沈黙の後、彼女がようやく口を開く
『私…お付き合いしてる人がいる』
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…え？
『だから、智くんの気持ちには、応えられない…』
“オトコ出来た？”
“え？いや、出来てないけど…どうして？”
…どういう事だ？
思わぬ事実を告げられて、しばらく理解出来ずにいると
いつかの夜、
店の前でオトコと抱き合っていたAの姿が蘇る
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「…アイツか」
“翔さん、今日から3日間、京都に出張に出てるんだけどね”
“戻って来たら顔出すって言ってたよ”
「…そこで、抱き合ってた」
“だから言ったろ、女一人じゃ危ねえって”
“違うよ、あの人はそんな…”
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『…そっか。見てたんだっけ「お前はさ」』
堪らず、口を開く
「“付き合ってるヤツがいる” から、俺の事、考えられないの？」
彼女は再び目を丸くして、俺を見つめる
「それとも」
「ただ単純に、俺の事、好きじゃないってだけなの？」
「…どっちなの」
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こんな聞き方、卑怯だって、分かってる
「もし、前者なら」
…彼女は
「俺、簡単には引き下がれない」
簡単に俺の事、突き放せないって
分かってるから________
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「…とりあえず、今日の所は帰るわ」
20年近くも
お前の事、思って来たんだ
「さっきも言ったけど」
「俺、本気だよ」
.
あともう少しだけ
俺に、チャンスを与えて欲しい________
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作者名：ティファニー | 作成日時：2015年5月15日 22時
