やさしい食卓三。【SS】 (ページ16)

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七十六。昔の話【翔】ページ16

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『潤くんはさ、まだしばらくは香港なの？』

あ、確かに。

『ああ、うん。おそらく後2〜3年はそうかな』

松本はそう言った後

少し考え込むような表情を見せて、話を続けた。

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『…あのさ、麻里奈なんだけど。会社、戻ろうとしてるみたいなんだよね』

「…え！？」

驚く俺を他所に二宮は “あ～やっぱりね” と言って、納得するような返しをした。

“結婚した時に会社は辞めてるから、復帰するのかは分かんないけど”

“まああれだけ優秀だったら直ぐにでも復帰可能だろうな”

『まだ決まった訳じゃないみたいだけど、その方向で動いてるって事は聞いてる』

…まあでも、別に、だからどうって事はないよな。

『ね、麻里奈ちゃんさ。翔さんがニューヨークから戻った事、知ってるの？』

そう二宮に問われた松本は、首を傾げて応える

『いや、俺は言ってないから、知らないんじゃない？』

『あ…でも、復帰の為に会社にコンタクト取ってるって事は、情報入ってるかもな』

まあ、アイツだってこの会社にいた人間なんだし

別に知ってたっておかしくはない。

『…でも、別にどうって事なくない？もう昔の話なんだし』

松本が言った。

『翔くんだって、前に進んでる。麻里奈もきっと、前に進もうとしてるんだよ』

…そうだな。

そうである事を、祈るよ。

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『それはそうとさ、知ってる？この人、今日の午前中ヒドかったんだから』

沈黙を破るように二宮が言う

『朝からずっとボーッとして』

『これからが心配だよ。Aさんの魅力にますます骨抜きにされちゃうだろうし』

「そうなんだよな…って、おい！」

“まあまあ、ホヤホヤなんだから大目に見てやんなよ(笑)” なんて言って松本が間に入って。

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こんな風に、3人で冗談言って笑い合って。

この時間をまた、取り戻せて良かった。

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『じゃあ二人共、今日はありがとう。また』

松本は、明日の飛行機で香港へ戻るらしい。

方向が違う松本は、一人でタクシーに乗って帰路に着いた。

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『翔さん、Aさん待つの？』

二宮が腕時計を見ながら俺にそう聞いた。

「ああ、そうだな。そろそろ終わるだろうし」

『じゃ、先帰るね。Aさんによろしく』

そう言ってAに持たされた土産を掲げて、二宮は先に帰って行った。