五十六。次の一歩【翔】 ページ26
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3年振りに会った松本と別れて
ふと腕時計の時間を確認すると、夜22時を過ぎる頃だった。
やべ、遅くなったな…
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“結局、アイツの中の翔くんを、俺には消す事が出来なかった”
そんな話を聞いても、俺の心が揺れる事はもう無くて。
多分それだけ、
俺の気持ちが固まったって事なんだろう。
京都で買った帯留の包装を見つめて、そんな風に思った。
“いつか櫻井さんに見初められる人は、幸せだと思います”
“こんなに愛情深い男性は、なかなかいないと思うから”
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あの夜
俺に心の内を明かし、俺の前で涙を流した彼女の頬を初めてこの手で触れて
そして、その俺の手にそっと重ねられた彼女の手に少し驚いたものの
どうしようもない愛おしさで胸が一杯になった。
そんな事を思い出したら
あの夜、彼女に触れたこの手がまた熱を帯びるようで
彼女に、会いたくて堪らなくなる。
“櫻井さん”
“また、お待ちしてますね”
思えば、
彼女への想いを確信してしまった今
それに…あんな夜があった後で
次の一歩をどう出るか、もしかして、かなり重要なんではないだろうか？
俺は今、この気持ちのまま
“客” としてあの店に行くべきなんだろうか？
ふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。
彼女に会いたいのは山々だが…
ここは少し、次の出方を考えるべきかも知れない。
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“京都から戻ったら顔出すって言ってたって、Aさんに言っちゃったからさ”
アイツは本当に…
“翔さん、あんまりウカウカしてらんないよ”
“強敵ライバル現るってところかな”
そう言えば、こんな事も言ってたよな。
…いや別に、俺だって余裕なワケじゃねえよ？
彼女がいかに魅力的で、いかに人を惹きつける力があるかなんて
それこそこの間の披露宴、二次会で散々思い知ってる。
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“今の翔くん、3年前よりすげー良い顔してるよ”
“良い人に、出逢えたんだね”
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松本の為にも、麻里奈の為にも。
俺がこの一歩を踏み出す事で
アイツらも、次の一歩を踏み出せたなら_______
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この時の俺はただ、そんな思いでいたんだ。
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作者名：ティファニー | 作成日時：2015年5月8日 16時
