やさしい食卓二。【SS】 (ページ13)

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四十三。時間ある？ページ13

数々の余興も済み、2次会の宴もたけなわとなった頃。

『ちょっと、そう言えばA！あのイケメン、知り合いだったの！？』

2次会が始まる直前、私が櫻井さんと会場入りしたことを思い出した様に騒ぎ出す友人たち。

特に櫻井さんは、今日一日の中で圧倒的に女子人気を集めていて

彼に彼女がいるかいないかなど、何かと彼の名前が話題に挙がっていた。

『あと、もう一人のイケメンもでしょ？披露宴前に声掛けられてた！』

ああ、二宮さんのことか。

「うん、まあ…ちょっとした知り合いで」

彼らを “店のお客様” という言い方をするのは、何故か躊躇われて。

『てゆーか、涼子の旦那さんの会社、本当に良いオトコ揃い！！そもそも旦那さんもカッコイイし！』

『でもさ、あれだけイケメンだと彼女くらいいるよね～』

友人たちのそんな会話に

やはり彼らはとても魅力ある男性として、世の女性たちの目に映っているのだということを、今更ながら思い知る。

所謂 “モテる” というやつだ。

.

“今日のAさん、すげーキレイ”

.

2次会へと向かうまでのエレベターの中、櫻井さんは特に言葉を発することは無かった。

彼はどうして、私を待っていたんだろうか

.

.

「涼子、斗真さん、今日は本当におめでとうございます。とっても素敵な結婚式でした」

お開きの声が掛かり、少しずつ参加者たちが解散して行く中で

今日の主役の2人にそう伝えて会場を後にする。

『…Aさん！』

友人たちと会場を出たところで、そう声を掛けられた。

それに振り向いた私と同じくその声の方に顔を向けた友人たちが “あっ！”と声を上げる

『このあと、少し時間あるかな？』

櫻井さんは真っ直ぐ私の目を見つめて、そう言った。

「あ、えっと…」

どうしよう、そう思っていると

友人の一人が私より先に彼に応えた

『あ、Aですね？どうぞどうぞ！この子、まだ次行きたかったみたいなんですけど、私たち明日早くて！付き合ってあげてくれます？』

…へ？

『じゃ、ちょっとAさん、お借りしますね』

彼がそう言って友人たちに笑いかけると、みんな目をハートにしたかと思えば

“じゃ、またねA！楽しんで”

なんて言って、呆気に取られる私を置いて

あっさりと会場を去っていった。