【d!】ひとりでできるもん

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niside

「それは必要なことですか？」
「いや、どうやろな」

人それぞれやし。
でも今のAちゃんはできるやん。

俺の言葉に彼女は少し考えたあと、ぽつりぽつりと話し出した。

そうは言われても今は結婚する気はありませんし、もし好きな人が出来ても、グルッペン様のように他に好きな人が出来てしまったら？
私はまた空っぽになってしまう。

「結婚はしたくありません。一人がいいです」

彼女はそう言い切った。

「まだ若いのに勿体ないなー」
「そんなことよりそれ、私にもやらせてください」
「へ？あ、ちょっと！それまだ焼けてへんて！」

俺がが作っていた卵焼きはAちゃんの手によってボロボロに崩れてしまった。
結構上手くいっとったのに…。
ちらりと彼女を見ると目に見えて落ち込んでいる。

「すみません」
「ほんま不器用やな」
「返す言葉もございません」

Aちゃんは、きっと怖いのだ。
グルッペンのために生きろと言われた人生が、消えたことが。
今まで自分がやってきたことが無駄になるのが。
そして本人は気付いてないかも知れないけど、婚約破棄に、傷付いてる。

(まぁ、そうやろな。突然婚約が決まったと思ったら呆気なく破棄された。しかも自分に非はまったくない)

「ふふふ、…はぁ、目が離せんわ」
「へ？」

いつか君が、きちんと立てるまで。

「ひとり立ちするまで面倒見たるよ」

(兄さん、卵焼き塩辛いです)
(え！？あ、塩入れすぎたか！)

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