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第二十一章『千錯万綜』【2】 ページ42

「そうだ! 戦闘訓練とはちょっと違うかもだけど。今日は体を動かす仕事があるよ」



 思い出したという様子で吊戯が紡ぎ出したその言葉に、「えっ」と真昼が反応し、顔を上げると。

「オレ達は戦闘班だもん。デスクワークばっかりじゃね〜」と笑みを浮かべながらそう言った吊戯に。

「デスクワークはまともにやってなかったじゃないですか・・・」

 真昼は呆れた面持ちで思わずそう漏らしてしまったのだが。

「はっは! 瑠璃ちゃんが手伝ってくれたおかげで、ちゃんと机の上の書類は片付いたから問題ないよ」

 吊戯は親指と人差し指を掲げつつ、キメ顔で応じてきて。

「・・・・・・ほとんど、瑠璃が片付けたようなもんだけどな」と瑠璃が書類を片付けていた間、机の端に大人しく座っていた黒猫が半眼で呟いたのだが。

 しかし、それは吊戯の笑いにかき消されてしまい、微苦笑を浮かべた瑠璃が黒猫をまた宥めるように腕の中に抱き上げると。

 吊戯の後に付いて真昼とともに、目的の場所へと移動を開始したのだった。





 そうしてやって来たその場所は広々とした真っ白い空間で、出入り口は一か所のみという部屋だった。

 そこでまずは身体を動かす前に、軽いストレッチを行うことになったのだが―――――。

「クロ、頑張って!」

 真昼と瑠璃が先に終えた後。人型に戻ったクロにも念の為にストレッチをやらせることにしたものの。

 開脚ストレッチをしようとしたクロの口からは「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ〜〜〜」と苦悶の声が漏れ出していて。

「これストレッチになってるか!? クロ、お前猫のくせに体硬いな!」

 瑠璃と並んで真昼もクロの背中を押そうとしたものの、二人がかりでも、ギギ・・・と軋む音がするのみで、びくともせず。

「猫への偏見だ―――――・・・」

 に゛ゃ―――――とクロがまた呻き声を漏らすと。

「はっは! 体硬いとケガしやすいよー? ってケガとか吸血鬼には関係ないのかな?」

 すぐ傍でストレッチ体操をやっていた吊戯が笑みを浮かべながらそう言った後に。

「その点オレは・・・こう!!」

「うわっ、吊戯さんめちゃくちゃ柔らかい!!」

 べたぁっと両脚を大きく開脚した状態で身体を前に倒した吊戯のその姿に真昼が呆然となり。

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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年4月25日 2時

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