第二十一章『千錯万綜』【1】 ページ33
「うっせー吊戯!! そういう余計なことは言わなくていいんだよ、ボケが!!」
ムギュ〜ッと吊戯の頬を弓景は引っ張っていて。
「ほんひょのこといっひゃだけなのに〜〜〜」
吊戯は痛みを堪えるように眉を下げながら弓景に言い返す。
そんな二人のやり取りに真昼は戸惑いの面持ちになりながらも、
「な・・・何がダメなんですか。俺達も何か手伝いますし・・・っ」
必死にまた訴えかけたのだが「イラネ」と弓景の反応はすげないままで。
そんな中、盾一郎が逡巡するように右手を自身の顎に据えると。
「まあ、いいんじゃねぇか」と賛成の言葉を口にしたのだ。
盾一郎の口から出たまさかの台詞に弓景が唖然とした様子で顔を引き攣らせるも。
「吊戯の監視があれば問題ないだろ。人手が大いに越したことはないし。戦力としては申し分ない」
笑みを浮かべながらそう盾一郎は言い切ってしまう。
そこですかさず真昼が「それにほらっ。俺達が一緒のほうが吊戯さんの仕事に影響も出ないと思います!」と言葉を紡ぎ出し。瑠璃もまた眉を下げながらひたむきな眼差しで吊戯を見遣ると。
「そうね。クロも私も吊戯さんとは距離の制限があるんですし・・・・・・!」
「え・・・いいよ・・・瑠璃ちゃん。オレのことは気にしないで。オレ仕事にやりがいとか求めないタイプだし。君達の近くでごろごろしてるだけで給料もらえるならそのほうが・・・」
吊戯は僅かにたじろいだような面持ちになりながら遠慮するというように右手を振って見せてきて。
その一方で弓景が眉を顰めながら盾一郎に話しかける。
「・・・なんだ? 妙にあのガキとアイツに肩入れするじゃねーか」
「べつにそういうわけじゃねぇよ。ただ・・・まぁ少し期待はしてるかな」
盾一郎は弓景に応じながら、フッと視線を真昼と瑠璃のほうに向ける。
―――――あの二人なら、もしかしたら吊戯のことを・・・・・・。
その時、吊戯はいつの間にか真昼の手の中から抜け出して瑠璃の傍に戻っていた黒猫を、両手で抱え上げると「オレ達こそが真の怠惰コンビだったのかもしれない!」と笑っていて。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年4月25日 2時