第二十一章『千錯万綜』【1】 ページ32
そろそろ二人を大人しくさせるべきだろうと動こうとした盾一郎と、吊戯を捕まえて、額にノリを塗ろうとした弓景と、それを防ごうと弓景の腕を掴んでいた吊戯。
三人が「はあ?」と呆気にとられたような面持ちで此方に振り返ってくる。
真昼は瑠璃の肩に乗っていた黒猫に向かって両手を伸ばしてガシッと掴まえると。
「椿と対峙する戦力として最強なのはシンプルに考えて『オレだろ!!』ってクロも言ってます!!」
ばっと黒猫を三人に対し、突きだして見せたのだ。
黒猫は突然の主人の宣言にギョッとした様子で固まってしまう。
真昼はそんな黒猫の様子を気にすることなく、さらに三人に向かって言い募る。
「こいつ絶対役に立ちます。いい奴です。一緒に働かせてください」
「イヤ・・・オレ一応ニート吸血鬼って設定で・・・」
働いたら負け・・・と冷や汗を流しながら黒猫は助けを求めるように、に゛ゃ―――――・・・と瑠璃のほうに目を向ける。
しかし―――――
「そんなの信用できるわけねーだろうが。吸血鬼だぞ」
「月満さん、約束します。クロは絶対むやみに人を攻撃したりしません」
否と唱えた弓景に対し、瑠璃もまた胸元で右手を握りしめると、真摯な眼差しで訴えを口にして。
「真昼君も私も、人だとか吸血鬼だとかじゃなくて、クロとして見てもらいたいんです」
きっぱりとした口調でそう言い切ると。
―――――そーゆーの向き合えねーって・・・。
―――――瑠璃、お前、最近真昼の影響大分受けてねーか?
瑠璃の意識の内に何とも言えない面持ちとなったクロがそんなふうに語り掛けてきて。
「無理。まず俺はテメェらみたいなガキが嫌いだ」
顰め面になった弓景がそう言い返してきて。
「出ました〜〜〜弓ちゃんのとりあえず全部嫌いって言っておくスタイル〜〜〜」
それに合いの手を入れるように吊戯が、はっはと笑いながら言葉を続ける。
「でも、瑠璃ちゃんはオレ達より確かに年下だけど。ガキじゃないでしょ? それに弓ちゃん、瑠璃ちゃんのことは気に入ってるんじゃないの?」
そうして吊戯が笑みを浮かべながら揶揄うような口調でそう言うと。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年4月25日 2時