第二十章『不倶戴天の関係』【1】 ページ50
「こーんなとこで育ってたらそりゃ人格も歪むよね―――――」
あっはっはっと笑いながら話しかけていて。
「特にここを出る気もないみたいですよ。住む場所なんて本人の自由じゃないですか」
人格の話をあなたがしますか・・・と露木も呆れを漏らしつつ、御国との会話に応じてきたのだが。
「・・・あの人の場合は自由っていうかさあ・・・」
しかし、御国が続きを話そうとした処で、電話の呼び出し音が鳴り響いて。
「あ・・・失礼します。車守さんからです」
白衣のポケットから露木はスマホを取り出すと「はい、露木です」と電話に応答をする。
『あー修? 真昼くんと瑪瑙さんと一緒だよな? 俺達もうオフィスにいるぞ。まだか?』
「まだか、じゃないですよ・・・」
二人を迎えに行ったあなた達が、きちんと最後まで案内をせず、別行動を取った為に。そちらに辿り着くのに時間が掛かっているというのに。
盾一郎からの確認と催促に対し、露木は苦々しい声音で念の為にと聞き返す。
「そちらは3人そろってますか」
『いや、吊戯が忘れ物したって部屋に戻って・・・それっきりだな』
するとやはりというべきか、1人だけ居場所が分からない状態だという。
「あの人。すぐいなくなるんですから目を離さないでくださいよ」
そこで露木が思わずまた苛立たしさを滲ませながら盾一郎にそう言うと。
『どっかで油売ってんな。捕まえてきてくれ』
はははと笑い声を上げた盾一郎からそう頼み返されてしまい。
「・・・・・・」
―――――そう来ると思いましたが―――――
憮然とした面持ちになった露木が心の中でそう呟いた時。
『あ!? なんだこのハンドクリーム・・・これ糊じゃねぇか!?』
という弓景の叫び声が電話向こうから聴こえてきて。
『そういえばそれ、昨日、吊戯がいじってたぞ』
『早く言えよ、あのボケの犯行かよ』
『おい。俺になすりつけんなよ!!』
『テメェも道連れだ』
『やめろバカ弓』
弓景と盾一郎―――――二人の騒がしいやり取りが始まってしまった為。
そこで露木は盾一郎との通話を終了してしまったのだった。
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※占ツク転記/21/04/12
【本館/21・04/12/別館/21・04/15掲載】
朱臣繭子
★不倶戴天(ふぐたいてん)は【犬猿】の類語です。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年1月15日 20時