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蜜璃ちゃんは無事に笑顔で帰ってきた、傷だらけだったのに、眩しいくらいの笑顔で。
思わず抱きしめると嬉しそうに抱き締め返してくれた。
「蜜璃ちゃぁぁん……無事でよかったぁ」
「もうっ、Aちゃんったら!泣きすぎなんだから」
そしてしばらく抱き合ってから、蜜璃ちゃんは自分の家族にも報告してくると、手を振って別れた。
日輪刀が届くまで、蜜璃ちゃんはしばらく家に戻るらしい、届いてしまえばまた離れ離れになってしまうのだろう。
師範だって最近は階級がどんどん上がって、家に帰ってくるのが少なくなっているというのに、寂しくなる。
師範の居ない稽古は、なんだか物寂しかった。逃げたって追いかけてくる人はないし、褒めてくれる人も、いないわけで。
「静かですね」
「……千寿郎くーん」
素振りをしていると、家事が一区切りしたのであろう千寿郎くんが私に駆け寄ってくれた。
「兄上、最近忙しそうですよね」
「そうだねぇ」
「なんだか、少し前までAさんと走り回っていたのをずっと見ていた気がするのに、今ではめっきり少なくなりましたね」
「おかげで泣く回数も減りましたよ」
笑ってみると、千寿郎くんには伝わっているのであろう、キュッと抱きしめてくれた。
「寂しいのですね」
「……そうだねぇ」
師範とはまた違う優しい匂い、お母さんのような匂いがする。少しだけ視界が潤むが、おちおち泣いてもいられないと、きゅっと目を瞑った。
「私も、最終選別に行くよ、次の」
「……え!?!?」
「千寿郎くん、私、少しだけ、少しだけ、修行してくるね」
「え、え、Aさん!?」
意を決したように立ち上がる、次の最終選別は確か冬だったかな、その時まで自分を見つめ直そうと思う。
「次に師範が戻るのはいつだろう、帰ってきたら伝えて欲しいな」
「Aさん、本当に行かれるのですか?」
「うん!」
師範と、蜜璃ちゃんと、戦えるように。2人を守れるせめて盾になれるように。
やっと鬼殺隊になる決心がついたのだ、そうとなれば最終選別に行かなければ。
「またね、千寿郎くん」
「…………お気をつけて、兄上に直接挨拶しなくていいのですか?」
「うん、だって師範だったら追いかけて来ちゃうもん、だからこっそり行かないと」
師範の腕に引かれたら、また優しさに甘えてしまうから、次に師範に会う時はきっと私が隊服を着た時だ。
だから、その時までさよならです、師範。
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透水 - え…物凄く好きなのですが、もう更新はされないのでしょうか? (7月24日 19時) (レス) @page28 id: e8fae7b723 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 面白かったです!もぅ、頬が緩みすぎて大変でした!更新待ってます!頑張ってください! (2021年10月30日 11時) (レス) @page28 id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - すごく面白くて一気に読んでしまいました!お忙しいとは思いますが、続きがとっても気になるので更新待ってます!! (2021年6月22日 22時) (レス) id: ab54e64a65 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - とても面白いです!一気に読んでしまいました。これで完結なのでしょうか?今後の展開も気になるものです(*´・v・`) (2021年2月14日 2時) (レス) id: e5ea1593cf (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2021年1月30日 17時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玄米茶 | 作成日時:2020年10月29日 21時