25錠目:『君以外と飲む酒はイマイチ』 ページ24
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さほど美味しくない唐揚げが重力に引かれ力なく落ちる。残すのが申し訳ない故に無理して食べようとしたのに、そんな気力は皆無だった。
｢俺達の母親が学生時代からの同級生だったらしくてな、俺は快く頷いたんだ。...が、Aは違った｣
｢......マジか｣
｢同時期に話を聞かされたんだろうな、彼女から連絡が入ったんだ。“考えさせて”ってな｣
｢そりゃまぁ、急過ぎるよ...なぁ｣
｢Aが快諾すれば、来年には挙式を執り行う筈だった｣
ほんの少しだけ安心してしまった俺が居た。心底最低な人間だなと嘲笑しつつ、卵焼きを咀嚼する。
｢...でも何でAはそんなこと言ったんだろうな｣
｢不満があるなら改善するって言ったんだ、俺は。...だけど、泣きながら否定して謝る彼女を、俺は責められなかった｣
水神矢は流れてくる煙草の臭いに顔を顰め、同時に空になったチャイナブルーが入ったグラスの水滴を撫でた。
｢彼女のことだから、独り善がりな理由では無いだろう? だから俺は宣言したんだ。“より一層格好良くなってもう一度迎えに来る”ってな｣
｢.....そんな言葉似合うの、都内でお前くらいだ｣
ロックグラスに残ったカクテルを飲み干し溜息を吐き、カウンターに残ったのは俺が誤って落とした唐揚げだけになった。
｢突然こんな話を押し付けて悪かった、お代は俺が払わせてくれ｣
｢いや割り勘しようぜ、俺めっちゃ飲んだし...｣
俺の言葉も聞かず水神矢はカードで料金を支払い、礼を言って外へ出る。
夏の夜でも風は冷たい。
飲み屋街はまだ騒がしく、眠らない街は完成されつつあった。
｢顔色悪いな、平気か?｣
｢え、あ〜...まぁ、大丈夫だ｣
｢...そうか。遅くまで付き合わせて悪かったな｣
水神矢とは改札付近まで特に会話をせず歩いた。
酒に毒された脳が正しい判断も出来ずに独り歩きする。
｢...なあ、水神矢｣
｢どうした?｣
｢俺もさ、まだ...“諦めなくていいよな”?｣
吸い込まれるような青色の目が、一瞬見開いた。
すぐにその目は伏せられ、僅かに笑った気がする。
｢...あぁ、譲るつもりは無いがな｣
＿
その後の行動を、あまり覚えていない。
水神矢とは反対方向の電車に乗り、2駅先の駅のアナウンスを聞いたのが最後に残っている記憶だ。
｢何処だよ、ここ...｣
勢いで改札を出てしまった、どうしよう。
左右を見ても見慣れた風景ではない。
｢折緒?...何してるの?｣
｢あ、え...A?｣
なんで、なんで、君が。
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26錠目:『そっか、不可抗力だったわ』→←24錠目:『知らなくてはならないこと』
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星猫 - もう一つのｐｃがしました。初めまして！とっても素敵です！高評価しました！ (2021年9月8日 11時) (
レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - ゆりりんさん» わ〜!! 勢いある挨拶ありがとうございます〜^^ ちまちま更新していきますので気長にお待ち頂けると幸いです (2021年2月2日 1時) (レス) id: f96d68692e (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - まず最初に…好き!!（挨拶）続きが読みたくてたまらないです！ (2021年2月1日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 棘水さん» 了解です！また何かあったら声掛けますんで、これからも更新頑張って下さい！！ (2019年4月9日 15時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!! が、合作イベント....!!大変魅力的で参加したい気持ちは山々なのですが私生活の多忙や内容が合作内容が全く分からず他の皆様にご迷惑をかける可能性しかないので今回は辞退させて頂きたく思います....また機会がありましたら是非....!! (2019年4月8日 22時) (レス) id: c7cb6e701d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棘水 | 作成日時：2018年7月20日 13時
