53話 ページ12
「ただいま〜」
『おかえり〜』
「あれ？今日亮平くん一緒なんだ」
リビングに入ると亮平くんとお母さんが台所に並んでいた。
「昨日と引き続いてお邪魔してまーす」
「もう亮平くんはいつ来ても良いのよ？息子だと思ってるんだから」
「えへへ。いいなぁ本当になっちゃおうかな」
「何言ってるの、亮平くんは阿部家の長男なんだから」
「なれる方法あるよ？‥‥‥ねぇ？」
亮平くんが笑いながら隣のお母さんを見て、お母さんも「‥‥ねぇ？」なんて返して2人でキャッキャとはしゃいでいる。仲良いなぁ2人とも！
今日のご飯はカレー。
亮平くんが来てる段階でちょっとそうかなと思っていた。だってカレーは亮平くんの大好物だもん。
「亮平くんは学校どう？生徒会に入ってるのよね」
「はい！選挙の準備とか文化祭とか忙しいけど、でも楽しいです。2年生になって去年より中心で携われる機会も増えたから」
「まぁ‥‥‥偉いわねぇ亮平くん」
「本当に凄いよ。私だったらどちらも平行でやるなんて、てんてこ舞いになっちゃう」
「え〜？でもAだって実行委員じゃん。そっちも忙しいでしょ。あ！そういえば出し物とかもう決まった？」
亮平くんがそう言っちゃったからお母さんも目をキラキラと輝かせて一緒に聞いてきた。
お母さんに実行委員になったこと言ってなかったのに！
「えっとね、演劇やることになったよ。‥‥‥白雪姫？」
そう言った途端亮平くんの顔がピシッと固まった。
「‥‥‥白雪姫？それって誰の意見？」
「誰って‥‥なんとなくみんなが白雪姫がいいんじゃない？って。あ、言い出した人はいるけど」
「だからそれは誰？」
「言っても分からないでしょ？」
「大丈夫。調べ上げるから」
「何言ってるの。‥‥‥まぁ、私は出ないから裏方なんだけどね」
そう言った途端、真っ黒だった目に光が戻って今度はキョトンとした顔になった。
「‥‥‥‥‥え？A出ないの？こんなかわ、女子1人だけなのに？」
「ふふっ、うん。結構面白そうなの。逆宝塚とか言ってね？」
「あ、そうなんだ、へぇ。‥‥‥いいねいいね！逆宝塚かぁ」
面白そうに表情を緩めて何度も頷く亮平くん。
お母さんは少し残念そうに「え〜出ないの？見たかったなぁ」なんて言ってるけど。
私なんかが出演なんて滅相もない。演技も出来ないし主役を張れるほど秀でた見た目でもないしさ。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
