35話 ページ35
「うわぁぁぁぁぁん！！！！！！！」
「こら！こんな店前で泣かないの！」
「黄色いのが欲しかったのぉ‥‥‥！！」
「しょうがないでしょ、ないんだから！」
疲れた様子のお母さんがギャン泣きしてる子供を必死にあやしている。
そんな様子をAちゃんがじっと見つめていた。
「Aちゃん。これ、あの子にあげてもいい？」
「‥‥‥うん、私もそうしたいなと思ってたところ」
そう言ってくれたのを聞いて小走りでヨーヨーをその子に渡しに行く。
「あの、すみません！」
「はい‥‥‥？」
「これ、たまたま取れたので良ければその子に」
「え！良いんですか‥‥？」
「はい！おまけで貰ったやつなんで」
「ありがとうございます‥‥‥」
「‥‥ねぇねぇ、これさっき取れたからぼくにあげる！」
「ふぇ？‥‥‥やったーー！！」
「ふふ。今度はママが行きたいところに連れて行ってあげてね？あんまり困らせちゃダメだよ？」
「うん！！ママ、どこ行きたい？‥‥」
良かった。お母さんが笑顔を浮かべて子供と手を繋いでいる。
何度もこちらを振り返ってお礼してくれているからこちらも返して、また屋台を回ることにした。
「‥‥‥やっぱり好きだな」
「へ！？なにが‥‥？」
「舞子ちゃんの優しさ。ただ相手を甘やかすだけじゃなくて、相手のためを思って行動してくれてるってことが伝わってくるの」
「そう、かな‥‥？あ、でもさっきのは違うよ」
「うん？そうなの？」
「さっきのは、Aちゃんがじーーって見てたからあげたいのかな〜と思って。でも私が取ったやつだからあげて良いのか分からなかったんでしょ？違った？」
「ううん、正解」
「はは、正解だ。‥‥‥だからね、私も好きだよ。Aちゃんのそういう優しさ」
「‥‥‥ありがとう！」
Aちゃんがすっごい嬉しそうにキラキラと笑うこの光景は、きっとずっと忘れないんだろうなと思った。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月6日 13時
