好きな人は遠きにありて愛でるもの…だけど (ページ14)

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SJ side

A「…気を付けて帰ってくださいね。」
SJ「うん、ありがとう！

あ、ここまででいいよ。」
A「はい・・・。」
SJ「・・・・。」
A「・・・。」

靴を履き、Aちゃんと向かい合ったまま、黙り込む僕。

どうしよう…好きの気持ちが溢れてくる。
胸が苦しい。ドキドキ通り越してバクバクする。

自分を誤魔化すつもりでとりとめのない話をする。

SJ「はは…女性の部屋に泊まるなんて…初めてで。実はすごく緊張してた。」
A「私も…男の人泊めたのは…初めてです。」
SJ「はは・・・。」
A「・・・。」

行くんだろ？僕。帰るんだろ？

SJ「もう・・・行くね？」
A「・・・はい・・・気を付けて。」

どうしよう…誤魔化せない。

抑えが効かなくなってきた…

まだ・・・離れたくない。

本当に・・・壊してしまいそうだ・・・。

・・・醜い僕がAちゃんに手を伸ばした。

SJ「Aちゃん、ごめんっ･･･」

僕は自分の衝動に突き動かされるがままにAちゃんを引き寄せ、抱き留め、唇を奪った。

A「んんっ」

漏れた甘い声に、衝動に流されていた僕は、さらに深く求めてしまった。
もっと・・・もっと・・・。

拒まれることも覚悟して…。
それでもこの瞬間を僕だけのものにしたくて…。

･･･唇を離すのが名残惜しかった。
このまますべて奪ってしまいたかった。

でもダメだ。

越えられない…越えてはいけない。

SJ「・・・っ、ごめん・・・我慢してたんだけど・・・ダメだった。」

僕の一方的な告白で、お互いの気持ちが通じ合ったわけじゃないのに。

僕が・・・選ばれたわけじゃないのに。

SJ「会社・・・気を付けて行っておいで。」

僕はまた、好きな人を自分の手で傷付けてしまうつもりなのか・・・。