1人のベッド ページ9
私よりもずっと背が高いのに、ゾロはソファーで寝ると言い、ベッドは1人で使えと言って譲らなかった。
なんでも、ゾロはいつでもどこでも寝ることができるのだとか。
後ろめたさを感じつつ、ベッドを使わせてもらうことにした。
1人でラブホのベッドで寝るのは初めてだ。キングサイズのベッドは私1人では大きすぎる。
部屋の照明を落とし、ベッド横の間接照明を一番暗くすれば、10分もしないうちに規則正しい寝息が聞こえてきた。
ゾロが寝ているほうに背を向ける形で、寝返りを打つ。やわらかいベッドが軽く弾んだ。
ゾロは昔から基本的に不器用なのに、ときどき底抜けの優しさを見せてくることがあった。
真っ先に蘇ってくるのは、くいなが亡くなって数週間ほど経った日の記憶だ。
くいなが亡くなったあと、ゾロはボロボロ泣きながら、師でありくいなの父であるコウシロウに和道一文字を譲ってほしいと頼み込んだ。
いつもあと1歩のところで及ばず、永遠のライバルだったくいな。そんなくいなを失ったゾロの心にぽっかりと大きな穴が空いたのは想像するまでもない。
そして、それは私も同じで。
ゾロが好きでくいなに嫉妬をしていた部分もあったものの、一番の親友であり、お姉ちゃん的存在。男の子たちに負けず圧倒的な強さを見せつけるくいなは、私の憧れだった。
くいなを亡くしたゾロは、涙が枯れてしまうほど泣いていた。
そのゾロの姿を見た私は幼いながらに決心した。くいなの代わりに今度は私が強い女になってあげなくちゃ、と。
だから私は、ゾロの前では絶対に涙を見せなかった。くいなの死を惜しむゾロを励まそうとした。
そうやって振る舞うことで同時に、くいなを失った悲しみを紛らせそうな気もした。
それでも、ある日1人でくいなの眠る墓の前に立っていると、堪えていた涙がとめどなく溢れてきた。
お供えしようと抱えていたリンドウの花束がバサりと砂利の上に落ちる。
もう、抑えきれなかった。
ひとりきりだからいいよね、そう言い聞かせ、大粒の涙を流す。
気づけば、墓前でしゃがみこんで泣く私の背中にはゾロの手が添えられていた。
ゾロがいたことに気づき、一瞬だけ涙が止まった。私の顔を覗き込むゾロの瞳もまた少しだけ潤んでいる。
「……A、お前はちょっと無理をしすぎだ」
抱き寄せられ、私はゾロの肩に顔をうずめて、くいなの名前を何度も呼んだ。
あのときのゾロは、まだ私と同じくらいの身長だったけれど、ずいぶん大きく感じた。
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
