18話 人違いを認めて〜 ページ18
「主人を納得なせるのは一苦労ですよ。私もまだ半信半疑ですから」
人違いをなんとか納得させたい。
「一度ご主人様にお会いしたいのですが」
平行線の話し合い。
これでは和也を連れて帰られないと翔は夫人ではなく主人に話す相手を変えようと考えた。
夫人は眉間の皺を寄せた。
「これから大事なお客様が来店されますの。主人は忙しいのです」
「これから来店されるのですね？では今は会えますね。和也の兄としてご挨拶させて頂きたい」
「会わせてあげたら。おばさんも困ってんるだろう？最終的にはおやっさんじゃないと解決できない話っぽいし」
アツシのナイス援護。
「そうですね、わかりました。こちらへ」
最初に渡ってきた廊下を戻る。
「で、なんであなたまでついて来たの？水道修理は？」
アツシも一向に同行。
「水道はすぐ修理できる。味方は多めの方がいいぜ？おやっさん一筋縄でいかないぞ」
人の意見など耳に入れない自己中心な人物。
先ほども夫人にも意見してくれた。
「頼りにしております」
「まかせろ。これで人間違いのチャラな？」
さてさて店内に戻ってまいりました和也君たち。
ご主人様は棚で反物のチェック中。
「旦那様、お客様の前にこの方がご挨拶をしたいと」
「そちらの方は誰かね？」
和也より一歩前に出た翔。
「私、和也の兄で大野翔と申します」
「和也……智の事かね？」
「ここにいるのは和也です。兄の智ではございません」
青田も夫人と同様雑誌の事を口にした。
「兄と和也は体格が似ております。前にも勘違いされたことがありました。青田さんが見間違えるのも無理はありません」
和也が智ではない証拠を求められ免許証を見せるも偽造したものではないかと疑われる。
夫人もそうであったが、この青田という人物は一筋縄ではいかないようだ。
どう説得しようかと翔の頭はフル回転。
そこへ一組の客が来店。
言っていた大事な客だろう。
ひとまず奥の家に戻って再度説明しよう。
振り向きかけた翔たちを止める声。
「あら？和也さんではないのかしら？」
「はい？」
名前を呼ばれて客人の顔を見る。
そこにいたのは……。
「偶然だね。ここで会うなんて驚いたよ」
二ノ宮夫人と兄である高哉だった。
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作者名：むつき
| 作成日時：2019年8月2日 23時
