でっかい愛

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「何それ。別れみたいな言い方やん」


神ちゃんの横顔、俺を拒絶してる。


目を合わせてもくれへん。


「やって、今日で終わりやろ？
まがいもんの俺らの関係」


神ちゃんは嘲笑うように吐き捨てた。


本音、なんかと違うよな？


「俺は、恋人ごっこなんて思たことない。
最初は演技やったかもしれんけど、
ほんまに幸せやったし、
それに、今は、」


もうほんまもんの恋人のつもりでおった。


ただ、言葉にしてないだけで。


「重岡、なんか勘違いしてへん？」


「神ちゃん？」


「俺は、恋人のふり頼んでんで？
お礼は後からきちんとするから。
お役目、お疲れ様でした」


「ちょっ、神ちゃん、本気で言うてんの？」


思わず、掴んだ、手首。


それは思った以上に真っ白で。


まるで透き通ってるかのように見えた。


儚くて脆い、神ちゃんの心。


俺は知らずに傷付けてしもたんやろうか。


「本気やで。
俺、もうすぐ会社辞めるかもしらん。
引き継ぎはちゃんとやるから」


「何言うてんの、そんな、急に」


「もう疲れてん、色々」


「神ちゃん、ちゃんと話そ。
何かあったん？
まさか、また、大林先輩と揉めたん？」


「もう重岡には関係ない。
今まで色々、助けてくれてありがとうな。
ほんまに感謝してる」


感謝なんて言葉、神ちゃんの口から聞きたくなかった。


俺は並んで笑い合える、恋人になりたいだけ。


「じゃあ、俺、もう帰るから。
重岡、ばいばい」


最後にしようってしてるはずやのに、

神ちゃんは、

軽い言葉で、別れを告げた。


呆然としてる俺に背を向けて駆け出す。


歩道橋の階段、転がるように降りてく背中に。


「神ちゃん！待ってや！
俺はこんな終わり方、嫌や！
好きやねん！
大好きやから！
俺のほんまの恋人になって欲しい」


必死で投げかけたけど。


ひしめき合う車のクラクションにかき消されて、
聞こえてたかは、分からへん。


初めて本気で好きになった子やねん。


どうして良いか分からずに、臆病になってしまってた。


俺、何か間違えたんかな。


神ちゃんに嫌われるような何か。


きっと、重大なミス、やらかしてしもたんやろな。

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