でっかい愛

ジグザグ近付く影。１ ページ22

赤side


やっぱり、恋人、よなあ。


そうとしか、考えられへん。


最初っから、俺の出る幕なんかなかったんか。


恋愛苦手やなんて、嘘ばっか。


そうらそうか、神ちゃんがモテへんわけないし。


けど、あの彼は、番やない。


やって、神ちゃんはヒートに苦しんでるわけやから。


つまり、あの人は、アルファやないってこと？よな？


一人、悶々とし続けた、金土、日月、火曜。


神ちゃんはインフルエンザって事で、
会社を休み続けてる。


心配でたまらんけど、彼氏おるわけで。


単なる同期の俺が口出しするんもちゃうしなとか。


体調悪いのに、手間取らせたくないなとか。


結局、連絡取られへんかった。


全部、意気地なしの男の言い訳。


毎晩、夜が明けるまで、
神ちゃんのことばっか考えとったくせにな。


甘い香りを思い出そうとして、上手くいかずにもがいてた。


そして、迎えた水曜日。


久々に神ちゃんが出社してくるって聞いて。


もう朝っから、そわそわなんてもんちゃうし。


昨夜、神ちゃんからお礼したいってライン届いてん。


ジャケットも弁償したいとか、
神ちゃんて、ほんまに律儀や。


神ちゃんの涙が付いたのなんか、
俺からしたら、嬉しい以外のなんでもないねんけどな。


これ、バレたら変態認定されてまうな。




１０時に淳太の会社のオフィスで打ち合わせの約束やから。


９時過ぎに、設計室に神ちゃんを迎えに来た。


これから二人きりで仕事が増えて、

俺、冷静でおれるかな。


恋人おるって知ってもやっぱ、

急に気持ちは変えられへんし・・・


「神ちゃん、おはよ」


「重岡、迎えに来てくれたん？
駐車場で待ち合わせかと思った」


「うん、そやねんけど。
ちょっと早かったし・・・」


口ん中でモゴモゴ言い訳。


神ちゃんの元気な顔、はよ確かめたかったし。
　

それに、数分でも長く一緒におりたい。


「もう大丈夫やで？ごめんな、心配かけて」


神ちゃんが眉毛下げて、笑った。


目の下に、笑窪のぞかせて。


はああ、可愛い。


「すっかり元気そうな顔で安心した。行こか」


並んで歩き出す。

それだけで、ほっこり幸せ気分。

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