でっかい愛

嘘付きな恋人。１ ページ15

緑side


ヒートの抑制剤が効かへんなんて。

こんなこと初めてで怖くて。


主治医の濱ちゃんに電話してしもた。


濱ちゃんは、
初めてのヒートを迎える少し前から、
診てもらってる濱田先生のお孫さんで、

出会った頃はまだ医大生やった。


おじいちゃん先生が引退した去年、
濱田医院を継いだところ。


俺の体のこと、俺より詳しく知ってる人かもしらん。


元々、濱ちゃんのおじいちゃんの病院を紹介してくれたんは、
あっくんやねん。


濱ちゃんとあっくんは幼馴染。


濱ちゃんとこに通ってる限り、
あっくんとの縁は切れへん。


けど、他の先生に診てもらうんは怖くて。

踏み出されへんまま。

　
俺からのSOSで、
濱ちゃんは、すぐにやって来てくれて。

病院に運んでくれた。


検査の結果、点滴が必要やって。

３時間、前より強い抑制剤を打ってもらうことになった。


ベッドに横たわって、点滴をうける。

不安で胸が潰されそう。


眠気を誘う薬に、意識が朦朧としてきたことが救い。


今は何も考えたくない・・・




夢も見ひいんぐらい深く、
コンコンと眠り続けて、

目覚めた時には、もう夕方やった。


窓から差し込む夕陽を背負って、
白衣の濱ちゃんが、俺の顔を覗き込んでた。


「智洋、目ぇ覚めたか？」


「濱ちゃん・・・
そうや、俺、病院に」


コンペ、どうなったかな。


重岡なら、きっと俺より上手くプレゼンしてくれてるはず。


太陽みたいな笑顔が、脳裏に浮かぶ。


会いたいな，って強く思うと、
胸の奥が疼いた。


「智洋、落ち着いて聞いてな」


濱ちゃん、優しいからな。

苦しそうに、眉を下げてる。


きっと、良くない話。


「智洋、好きな人出来たんか？」


「なんで・・・？そんなこと聞くん？」


「そのせいかな、思て。
こないきついヒート初めてやし」


「・・・好きな人出来たら、
ヒートきつなるん？」


あっくんの時はそんなことなかったのに。

その言葉は飲み込む。


「どうしてもな。
人間の本能や。
それでなくても、智洋は今年２６歳。
一番の成熟期にあたるからな。
ここから5〜6年は、
子供を産むのに最適な期間やねん。
つまり、ヒートは一番キツくなる時期や」

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